□ふたりあそび
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いつ見掛けたって弟の周りには女子生徒

もう見慣れた、
もう見飽きた光景。


(頬染めやがって…)

ベンチに腰掛け、渇いた溜息を吐く。

(ニコニコしやがって)

俺の膝の上には2人分の弁当。いつもより早い時間に慌しく出ていった雪男、一応持ってきたんだが、必要なかったか。

(にしたって…)

どこがいんだ。女子達よ…ちょっと背が高いとこか?腹ン中真っ黒だぞアイツ。
ちょっと賢いところか?お母さんばりに口うるせーんだぞ?
ちょっとイケメンだってか?なら俺だってメガネすりゃ結構見れんだろ。ホクロねぇし!!

(つーか…


ちょっとくらいこっち見ろ!)


腹んなかでそんなこと考えながら、周りの女子より頭いっこ突き出たメガネを睨むと不意に目が合った。

女子に断って、俺の方にかけ寄ってくる



「声かけてよ、兄さん」

「…今気付いたんだよ」

「ずっと見てたくせに。」

「気付いていたならさっさと来い!」

ニッと口角を吊り上げる雪男の腹に弁当を押し付ける。さっきまでの爽やか笑顔はどこに行ったのか、俺がよく見る顔はコレだ。


「腹減ってんだよ俺は!」

わざわざ持ってきてやったんだから感謝しろと口を尖らすと、ありがとう。と素直に礼を言われた。

いつも空回りばかりの俺は感謝の言葉に慣れていない。少し照れくさくなって、雪男より先を歩く。顔を隠すため。
待ってよと雪男がついてきたが、声が笑ってたから無視した。








「今日でやっと落ち着きそぅだよ」

そう言ってメガネを外し伸びをする雪男。ここ数日寮に帰ってきたって机に向かいっぱなしだったから俺ともろくに会話がなかった。


「じゃぁ、今日は早ェーのか?帰り…」

「そうだね、何?寂しかったとか?」


見透かすように目を細める雪男に慌て、バカ違ぇよ!と答えたが、図星すぎて目はあわせられなかった。


新妻みたいだね兄さん。と人の顔を覗き込むコイツはいつからこんな風になっちまったんだ。昔はあんなに可愛かったのに。










「ご馳走様でした。」

美味しかったよと立ち上がった雪男は、もう行かないと、と俺の頭にポンポンと軽く触れて足早に戻っていってしまった


双子なのに、あいつばっかり大人みてぇだ。



俺の中で、いいようのない不安が見え隠れした。
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