君
□コンマ
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何でも2人一緒だったのに、キスやセックスは兄弟が相手じゃダメなんて、可笑しいよね。
祐希がゲームをしながら独り言のようにつぶやいた。本当に独り言なら流せたのに、チラッと祐希の方に目を向けると祐希も同じタイミングでこっちを見るもんだから、聞き流すこともできなくて
(本当双子って…)
「う〜ん、まぁ…そう?なのかな…」
確かに何でも一緒だった。着替えも箸の持ち方の練習もお風呂も歯磨きだって
でも、それは幼少期の事で、俺が部活を始めてからはお互い何もかも一緒…ではなかった気がする。
祐希は漫画やアニメが好きだし、俺は部活で青春みたいな事してたわけだし。
まさか、ここへきてキスやセックスをお互い一緒に…は無いと思う。
「悠太は想像した事ない?そういうの…」
コントローラをテーブルに置いて祐希が俺の隣に座る
このての話を真剣にする気なのかと思うと足の爪先に力がこもった
「、無くはないけど、イマイチピンと来ないんだよね…」
(もちろん弟をおかずになんてしていないし…)
膝の上にある自分の指先を見つめる
顔を上げたらまた目が合う気がしたから。
そういうものに興味が無いわけじゃない。けど、何となく自分にはまだ早い気もしていたし、
今の穏やかな学校生活も気に入ってる。
祐希も同じだと思っていたのに。
(実際早い、よね)
いくら双子だってこの話はさすがに照れる。
ましてや女の子の匂いですら酔ってしまう祐希からセックスなんて言葉が出たことにも動揺していた。
「し、たいの?祐希は…」
「いつか初めてが来るなら悠太が良いなと思っただけ。」
「え…」
表情も変えずツラツラそんな事を言ってしまう祐希より、先を想像してお腹と耳が熱くなった自分の方が心配すべきかもしれない。
「…ッ今日から、お風呂は1人ずつで…は、どうでしょう…」
「えー…」
変化なんて一瞬で、キッカケなんてちっぽけだ。
「お風呂は一緒がいいけど、とりあえず悠太が意識してくれたわけですし、
手始めにキスなんてどうですか。」
一ミリでも動けば触れてしまうほど近く、耳元で囁く祐希は、近年稀に見る上機嫌だった。
「しま、せん。」
なんでそうなるんですか祐希君とボソボソ突っ込むと弟は少しだけ唇を尖らせ黙り込んだ。
「…」
「…しないよ、」
「…」
「しない…」
弟の無言の圧力を前にして、俺は自分に言い聞かせるようにキスなんてしないと繰り返した。
「…っふ」
「…祐希、なんで笑ってるの」
「お気になさらず」
浅羽兄弟、中学生の話。