□一番を僕に
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おやすみ、雪男…




「……ッ



夢…


…なんつーか…」


(すっげー恥ずかしい事思い出しちまった!)


やけに喉が渇いて、目が覚めた
暑くもない季節に無駄な汗はかいていて気持ち悪い。

反対側に眠る雪男は腹立つくらい涼しい寝顔をしてやがる




自分でも、よくあんな事できたなと思う

(マセガキか!って俺か…)

大人の 愛してる がよく理解できなくて、自分なりに一番伝わる言葉を探した

(だいすき…だ。)

あの時は精一杯唇に気持ちを込めた気がする

"だいすき"が伝われば良いと思って力一杯押しつけた

(…恥ずかしすぎる)


今でも

きっと同じ言葉を選ぶ



成長してない自分に少し呆れたけど、
"愛してる"なんてくすぐったいし、らしくない

(大好き……だ。)


たしかクソジジイのせいで一気に恥ずかしく思えてやめたんだった
あんな素直な行動、もう二度とできねぇけど、
それでもずっと

これからも気持ちだけはかわらない。



(…水のんで寝よう)

キシリ…
忍び足で部屋を出ようとしたのに扉をあける音で雪男が目を覚ました

「わりぃ、起こした…み、水飲みたくて」

「…うん」

「お、おやすみ」

「うん、…おやすみ兄さん。」

「……おぅ」

静かに閉めた扉はやけに冷たかった



無恥なあの頃が羨ましいなんて

(バッカじゃねーの)




「………あちぃ」

声は擦れて、

今は、言葉すら難しい


.
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