瑾愛倒祭

□瑾受裏的20のお題その6「絡む」
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指先をなぞる濡れた肉の感触が、あたしの中の何かを狂わせること…

ねぇ、貴方は知っていたの?






かたん…と小刀を卓の上に置くと傍らで見守っていた孔明は殊嬉しそうに瞳を輝かせる

その視線にくすぐったさを感じながらも彼に向き直ると優しげに笑んでやる

「さ、出来たよ」

「兄上…よろしいですか?」

「……まったくしょうのない子だね」

彼の言わんとすることを瞬時に察して苦笑を浮かべつつも皿の上の果汁がたっぷりと滴る実をひとつ手に取って口へと運んでやる


まるで気分は雛に餌をあげる親鳥のようだ


柔らかな子供の唇が果肉ごと子瑜の指を咥え込み舌を絡ませる


くすぐったいと目で訴えるが孔明は殊更笑んでゆるゆるとそれを口腔へ導いていく

「こら…おやめよ」

「食べさせて下さい…もっと」


言いながらそっと子瑜を仰ぐ瞳に瞬間背筋がぞくりと冷たくなる




何だろう、今のは…


まだ知らぬことも多かったあの頃は知る由もなかった その瞳の中に宿るもの





天性の幼い魔性
その笑みに誰もが魅せられ堕ちていく…





そっと掌に収めたひとつの果実


つやりとしたそれに指先を滑らせれば今でも鮮やかに思い起こされるあの柔らかな感触



それをせがむ幼子はもう傍らにはいないけれども





「兄上…」


ほら、やってくるその美貌は魔性の月



子瑜の手から果実を奪い取って放り捨てるとその手を掴み、唇を這わせて舌を絡ませる



その瞳に見えるはくらりと眩暈がする程の魔性



あの時からずっと
あたしは貴方に捕らえられたまま



けして逃げられやしないんだよ…






END





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