Jigokudo
□Non touch kiss
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「お、蒼龍じゃん」
先程「あげてんか」で各々買い求めたコロッケをがしがしと頬張りながら地獄堂を目指して歩いていた三人は丁度用事を済ませたばかりで出ていく蒼龍の姿を発見した
「よっス、蒼龍」
「やぁ三人とも。今帰りかい?」
「ソーちゃんももう帰っちゃうの?」
「コロッケ買ったんだぜ。蒼龍も食ってけよ」
「いや、遠慮しておくよ。君達が来る前に用事が済んでよかったよ」
「何だよその言い草。まるで俺達がいつも邪魔してるみてーじゃねーか」
「みたい、じゃなくて実際そうだろう」
「ひっど〜いソーちゃん!俺達ソーちゃんの力になりたいだけなのにーっ」
てつしはぶすっと頬を膨らませながら、リョーチンが目をうるうるさせながら(でもコロッケを食べるのはやめない)抗議した
「あのねぇ…君達は術士である前に子供だってことを自覚したまえ」
実際何度死にそうな目にあっているか数えるのも頭が痛くなる程に彼等は死と隣り合わせの戦いを乗り越えてきたのだ
凄いといえば凄いだろう…並の子供に比べたら
それでも彼等の力はまだ未知数な部分が多い
そしてまだ知らないことも多い
無知は時として命を落とす枷となるのだ
「まぁそういう訳だから私はここで失礼するよ」
「蒼龍」
三人のやりとりを傍観していた椎名が漸く口を開いた
「何だい、裕介…っ?!」
言い終わらないうちに椎名は自分の手に持っていたコロッケを彼の口に押し込んだ
突然のことで驚く蒼龍だが吐き出す訳にもいかず仕方なくそのまま咀嚼して飲み込んだ
口いっぱいにエビクリームの濃厚な味が広がる
「っ…突然何を…」
訝しげに言った蒼龍を勝ち誇ったように微笑みながら椎名は言った
「間接キス」
「はぁ?」
その単語に聞き覚えがないらしく、ますますわからないといった顔をして聞き返す
「今蒼龍はオレの食べていたものを食べただろ?つまりコロッケを介してオレと蒼龍はキスしたって訳」
油の付いた指を舐めてみせながら椎名は彼にちらりと流し目をくれてやる
「………!!」
蒼龍の顔がみるみる真っ赤になるのをてつしとリョーチンはまじまじと眺めながら言い合った