Jigokudo
□First Step
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おかしい位に気が乱される
おかしい位に胸が高鳴る
感情が
言葉が
次から次へと溢れ出す
この感情を何と呼ぶのか、私は知らない…
朝一番の飛行機の便で日本に一時帰国した蒼龍はその足で地獄堂へと向かった
「わ!ソーちゃんだっ!!」
「久しぶり蒼龍っ!」
足を踏み入れたと同時にガキどもの手荒い歓迎を受けながら蒼龍は一歩離れた場所から自分達のやりとりを面白そうに見つめている椎名を見遣った
「久しぶり。また困りごと?」
「君こそ元気そうで何よりだね」
少しの刺をちらつかせながら二人はいつものように言葉を交わす
「フッ…」
小さく笑みを浮かべて椎名が不意に踵を反した
いつものようにもっと突っ掛かってくるかと思ったのに…と何故か拍子抜けしてしまう
「…………?」
否、これ以上言い合いを続ければいづれ自分がムッとさせられるとわかっているのに…どうしてこんな気持ちになるのだろう
寂しい、なんて
用事はすぐ済むはずだったのにやはり三人悪が関わって簡単に終わる訳がなかった
話している間に首を突っ込んできたり揚げ句の果てには話の腰が根本からぽっきり折れてしまい最初からやり直しになったり
しかしやはりその中に椎名はあまり交ざってくることはなかった
それがひどく気になった
「あ〜っ、俺ん家今日すき焼きなんだ!はやく帰んなきゃ肉がっ」
店の柱時計が六つ鳴り響く頃てつしがふと思い出したように叫んで立ち上がった
「やれやれ、騒がしいことじゃのぅ…」
「んじゃ俺達帰るね!バイバイソーちゃん、おやじ」
てつしに続いてリョーチンが立ち上がってにこやかに手を振り、釣られて蒼龍も小さく手を振った
「あぁ、気をつけて」
「じゃあな」
「あ…」
素っ気ない程に短いそれに蒼龍は声をかけようと思わず立ち上がったが椎名はさっさと踵を反して振り返りもしなかった
「おやじさん…今日私何かしましたかね…?」
「ひっひひひひ!」
ぽつりと零れた疑問にさも可笑しくて仕方ないといった感じのおやじの笑いが響いた
「笑わないでくださいよ…」
「気になるなら本人に直接そう尋ねるがいい」
「……〜っ…」
その言葉に不服そうに眉をしかめるが観念したように立ち上がり慌てて外に飛び出していく
「やれやれ、世話の焼けることじゃのぅ…」
「裕介君!」
キ…ンと冷たい一本道に蒼龍の声が響いた
彼の足がはたと止まった