Jigokudo

□どっちもどっち
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「へへ…一人とは好都合だぜ」

「小学生のくせにちょっと意気がり過ぎなんだよお前」

「俺達がしっかり教育しなおしてやるよ」


それは椎名が一人で地獄堂に向かっていた時だった

いかにもガラが悪そうな高校生が三人、椎名の前に立ちはだかった

口ぶりからして前に制裁した奴らなのかもしれないが顔なんていちいち覚えちゃいない

椎名はザッと身構えながらきわめて冷静に戦略を練っていく

何せ相手は三人、こちらは一人
体格的にも状況的にも不利なのは火を見るより明らか

(さぁてどうする…?)

これからてっちゃん達に顔を合わせるのにボロボロでは格好悪い


そう考えた時だった


「やぁ、裕介君じゃないか」

丁度高校生共の背後にぬっと立った人物を見上げて椎名はぎょっとした

「そ…蒼龍…?!」

何事と振り返った高校生はもっとぎょっとした

ただでさえ長身な彼はかなりの迫力を伴っている

そして微かに漂わせる手練の空気…そんなものを敏感に感じ取ったのだろう

彼等は顔を見合わせてすごすごと立ち去っていってしまった

「久しぶりじゃん」

「いつもあんな輩に絡まれたりしているのかい?」

「しょっちゅうさ。自分のことは棚に上げてしつこいったらないね」

「自分より年下にいいようにやられるのはプライドが許さないんじゃないのかい」

「かもね」

大袈裟に肩を竦めてみせながら椎名が答えた

年上なら年上らしく年下を食い物にするような行動はするべきでないとは思うのだが

襲撃されるのが嫌ならば相応の理由を作らなければいい



「ところで蒼龍はいつから日本に?」

「今日の昼に着いたばかりだ。また厄介事があっておやじさんのところに、ね」

「へぇどんな?」

事件の匂いに椎名の黒耀石のような瞳が輝きだす

それに明らかに嫌そうな顔を浮かべて蒼龍は待ったをかけた

「今回は言わないぞ!またゴタゴタするのは御免なんでね」

「ふ…ん、今更そういう事言っちゃう訳?へ〜ぇ…」

「頼むから毎度首を突っ込みに来るのは止めてくれ。こっちはいつも隣でヒヤヒヤさせられているんだぞ」

「心配?すんごい大きなお世話」

「茶化すな。こっちは真剣に言っているんだ」

眉をしかめて臆することなく見上げてくる姿はまるで一端の大人のようではあるけれど

「好奇心だけが過ぎるといつか命を落としかねないよ」
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