Jigokudo
□Blue Velvet
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どうせ御優秀で世界中を飛び回っているあいつに盆も暮れも正月もありはしない
一緒にいられるなんてカケラ程も期待しちゃいなかったのに
「やぁ、久しぶりだね。裕介君」
なんであんたここに…オレの目の前にいる訳?
さも当然のように「やぁ」とか言ってんなよ
まずなんで日本に帰ってきてるのかを説明するのが先だろうが
「偶然通り掛かった」なんて言われて信用できると思ってんのかよこの狸が
わざわざオレが一人の時狙ってるのバレバレなんだよ
「で、今度はどんな面倒事?」
喫茶店の奥の席で頼んだ紅茶を啜りながらしれっと尋ねると、蒼龍は心外と言わんばかりに眉を顰めた
「人をトラブルメーカーみたく言わないでもらいたいね。君達じゃあるまいし。…あぁ、君達は首を突っ込む専門か」
相変わらずなその物言いが何だか懐かしい
悔しいけれど少し嬉しかったりする自分がすごく嫌だ
わざわざこんな特別な日に会いにこなくてもいいというのに
自分の為に来たのでは、とまるで女のように期待してしまうから
「そう言えば今日はいつもの二人は一緒じゃないのかい?」
「四六時中一緒にいるわけじゃないさ。生憎ね」
「そう、よかった」
それを聞いたらてっちゃん達は絶対に怒り狂うだろうなと頭の中で思いながら椎名はフッと笑った
蒼龍との関係はあの二人にも誰にも知られたくはないから
隠し事はしたくないけれど世の中には言う必要のないことだってある
それもそのひとつだと自分では思っている
「折角会えたとこ悪いのだけれど、またすぐに行かなければいけないからね」