Jigokudo

□星見の夜に
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「君をさらって行くよ、裕介」

「嫌だよ折角の休みに」

「今回ばかりは聞く耳持たないよ、さぁ行こう」

「今回どころかあんたはいつも聞く耳持たないだろうが!」

「おや、そうだったか」


寝起きの不機嫌そうな君をベッドから抱き上げて、パジャマのままで旅に出よう

行き先はまだ内緒


「ちょっ…何処まで連れてく気だよアンタ!」


どこでもドアを潜って暗闇の中をどんどん歩いていく

腕の中で君が暴れるけれど気にしない
がんがん叩いてくる君の手もまるで子猫のおいたみたいで可愛いものじゃないか


「…勝手にしろ!」

抵抗し疲れたのか、腕の中でつんとそっぽを向きながら大人しくなる
どうやら私の勝ちみたいだね


ドアを抜けたその先の私の城
どんどん廊下を突き進み、階段を上がりとうとう最上階へと到達した


バァンとドアを開け放てばその真上にひろがる星の海

「わぁ…」


全部が一番よく見える場所に座って膝の上で思わず感嘆を漏らした君を抱き締める

「…あんたが俺に見せたかったのってこれ?」

「日本ではタナバタという行事があるのだろう?」

「……別に近場だっていいだろう」

「どうしても二人きりで見たくてね」

「恥ずかしい奴」

つれないことを口にしながらもさり気なく身体を預けてくる君が堪らなく愛しくて

きつく抱き締めたら脇腹に肘鉄がめり込んだ

「……痛いよ裕介」

「力入れるな苦しい」





やれやれ、夜空の二人が嫉妬するにはまだまだ…ってところかな






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