Jigokudo
□ハッピーバースデー!椎名
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今日は裕介君の誕生日………らしい
てつし君達に聞いた情報だから間違いない
誕生日といえばお祝い、パーティー、プレゼントと相場は決まっている。かくいう私もあれこれ物色してはきていたものの未だにこれだというプレゼントを決めかねて今に至る
そもそも子供らしからぬあの子供の喜ぶものとは一体何なのだろう?花?装飾品?食べ物?どれもしっくりこない
どうせあげるのならちゃんと使って貰えるものがいい。そこで仕方なく本人に直接問いただす為にこうしてやってきた………………のはいいのだが
「何で貴方までここにいるんですか………サー・ヴァレンタイン……」
地獄堂の本のある部屋にてさも当然のようにお茶を御馳走になっている人物に気のせいでない頭痛を感じながら問い掛けた
するとやっぱり当然と言わんばかりにいい笑顔を向けながらサーが答える
「聞けば今日は私の可愛いユースケがバースデイだというじゃないか。これは是非祝わなくてはと思って飛んできたよ」
「そうですか……」
いくら現役引退したからといっても貴方それなりに忙しいじゃないですか。なんで気軽にここにいるんですか
あれこれ脳裏を過ぎったが言葉になることはなかった
ちなみに私はこの日の為にスケジュールを詰めて詰めて何とかオフにしてもらった。この日の為だけに
断じてサボりではない
「というわけでユースケ、何でも欲しいものを言って御覧。出来る限りの望みに応えよう」
「わーすげー、いいなぁ椎名」
「俺だったらまた妖精の森連れてってだなぁ」
「あぁ、いいかもね。それも」
当の本人はといえばサーの申し出を適当に流しながらてつし君達といも飴にぱくついている
「でも今欲しいものって特にないかなぁ……」
特にない……ときたか。困ったなと考え込んでいたその時サーが裕介君の右手をそっと取って手の甲にくちづけを落とした
あ、と止める間もなかった
まるで騎士が姫君に愛を囁くかのようにそれをしながらサーは殊甘く囁いた
「ならば私と揃いのリングはどうかね?右手の薬指に誂えたプラチナの…」
「いらない」
「勿論リングだけではない。私の城で君と私の半生を共に…」
「いらない」
「サー!その手を離して下さいいやらしい!!」
あれだけ拒否されているというのにしっかり掴んでいる手を慌てて割って入って引き離す
まったく油断も隙もありはしない
ごしごしとジャケットの裾であからさまに彼の手を拭ってから蒼龍は苦笑いを浮かべているマーカスを睨みつけた
「大体いくつ年齢が離れていると思っているんですか!犯罪です犯罪!」
年齢不詳、だが自分の年齢を倍も越えているであろうこの男とまだ合法的に酒も煙草も結婚もNGなこの少年が並んで一体誰が恋人同士だと思うだろうか。いや、何者も思わない
「そーちゃんだと兄弟に見えるよね」
「いや寧ろ年齢的には親子か?」
「爺さんと孫位だよてっちゃん」
外野で何やらケシカラン発言が飛んできているがこの際無視だ
今は卿の邪な手からこの子を守ることが先決……
「とにかく何かあんたらから貰うと後々大変な事になりそうだからいらない」
重そうだし、と付け加えて断固拒否のご様子な裕介君。いいぞ、もっと言ってやれ
そして帰れマーカス卿
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