Jigokudo

□となりの暁さん
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その日の目覚めは最悪だった


よく覚えてはいないがなんだか物凄い悪夢
はやく目覚めなくては……そう思わせるようなそれ


だが、本当の悪夢は現実の方で待ち構えていたのだった




「……朝か」

うっすらとかいた汗を拭いながら椎名は呟いた

閉ざされたカーテンから微かに差し込む朝日。日の光でも当たれば少しは気が晴れるかもしれない

ずきずきと痛む頭を押さえながらカーテンに手をやって、まさに横に引こうとした時だった


「………?!」

何か見えてはいけないようなものが視界に入り椎名はぎょっとしながらカーテンを固く閉じる


見間違いだ気のせいだ奴がこんなところにいるわけがないあぁそうか俺はまだ寝ているんだきっとこれはあの悪夢の続きなんだ……

必死に自分に言い聞かせる椎名の耳にとてもよく聞き知った人物…?の声がガラス越しに響いてくる


「よっ、おはよーさん。今日もいい天気やで。ちゅう訳で開けて♪」


何がという訳だばかやろう。心の中で全力でツッコミながら椎名は自分の頬をギリギリと抓った
非情にもこれは紛うことなく現実だった

そうこうしている間にもガラス戸がコンコンと叩かれ、ベランダにいる奴から再度声がかかる

「ちょお…開けてぇな。なぁ…」


あーあー聞こえない。何も聞こえない
現実から目を逸らすのはいけないことだろうが相手が奴なら話は別問題だ

そう思いながら着替えを始めた時だった

「……開けてくれんのやったらしゃーないか。ここは強行突破…「止めろ馬鹿つきが!」

ぽつりと呟いた言葉に不穏なものを感じ椎名はカーテンを開けて怒鳴る


その先で今まさに拳を窓ガラスに向けて振り下ろそうとしていた………暁

ばちりと視線があい、奴がにんまりと嫌な笑みを浮かべる。……気持ちが悪い


「おはよーさん裕介。朝から大出血サービスやな」

「あぁ?」

「セミヌードお披露目なんてお兄さんドッキドキやん♪」

「………」

ブツン

恥ずかしさよりも先に椎名の中の堪忍袋の尾が音を立てて弾け飛ぶ
こいつほど人の勘に障る天才はないだろうというくらいの不快感にそれほど低くはないはずの椎名の沸点は一気に臨界に跳ね上がる



「……にがドキドキだこのクソ妖怪が!死ね!」

ガラッ!とガラス戸を開け、椎名は間髪入れずに暁の鳩尾に拳を叩き込んだ




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