Jigokudo
□未定
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どんなに似てても俺は貴方じゃない
この身に流れる遺伝子の何処にも貴方はいない
それが嫌だと感じたことなんてないけれど
不満なんかこれっぽっちもないけれど
ただ少しだけ羨ましく思ったりはする
「あ、竜也兄だ」
「本当だ!竜也兄だ!」
「竜也兄ーっ!!」
沈む太陽が辺りをオレンジ色に染める頃、地獄堂からの帰り途中だった三人悪は前方から歩いてくる竜也を見つけわっと駆け寄る
低血圧を患っている彼も夕方ともなると調子を取り戻し物静かながらも三人に朗らかに接してくれる
「どっか行くの?」
リョーチンが尋ねると竜也はあぁ、と短く答えた
「母ちゃんに買物頼まれたんだ。醤油買ってきてくれって」
「あっ、俺も行く!」
そう言って竜也の隣へと行くてつしを二人はバイバイと手を振って見送る
夕陽に向けて遠ざかっていく二人の背中を見送りながら残った二人は小さく溜め息をついた
「いいなぁ…これから夕飯じゃなかったらついてくのになぁ」
残念そうに溜め息をつくリョーチンの横で椎名は黙ったままただ遠ざかる二人の背中をいつまでも見つめていた
てつしやリョーチンとは違って椎名には兄弟はいない
だからといって特別寂しいということはないがそれでもたまに竜也兄に会うとふと思ってしまう
一緒に過ごしている間だけ、まるで自分に兄貴が出来たみたいだなんてそんな馬鹿なこと
一緒にいて楽しい嬉しい、だけどその反面こうして離れゆく瞬間が……寂しい
てつしみたいに本当の兄弟だったらきっともう少し長い時間いられるだろうに
(いいな…)
リョーチンのように声には出さないが椎名はそんなことを無意識に考えてしまっていた
そんなことを思ったところで、願ったところで詮なきことだとわかっている
でも叶わないとわかっていても望んでしまうのもまた人の性というものだろう?
「どうしたんだよ椎名、そんな溜め息なんかついてよ」
「…ん、ちょっと考え事」
無駄な考え事をするようになって数日経ったある日、いつものように地獄堂の奥の座敷で手にした本に視線を落としながら椎名がふとついた溜め息を聡く耳にしたてつしが不思議そうに彼に問うた
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