Jigokudo
□Don't touch my dear!
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絶対に渡さない
特別な日なら尚のことね
「椎名!誕生日おめでとう!!」
「誕生日おめでとう!!」
「ありがとう」
祭りじゃーとばかりにわぁっと盛大に御祝いの言葉を張り上げる二人にその二つくらい低いテンションで返す一名
11月11日、今日は椎名の誕生日だ
母ちゃんに父ちゃん、そして三番目四番目と続いてくれるのは毎年決まってこの二人だ
その恒例事項がひそかに嬉しい椎名は二人程騒ぐことはないにしてもいつもよりも表情が照れ臭そうに綻んでいる
「後でプレゼント渡すからなっ」
「オレ達二人で選んだんだっ!」
「ありがとうてっちゃん、リョーチン」
二人からのプレゼント…きっとあっと驚かされるようなものをくれそうだ
怖いやら楽しみやら…でもきっと楽しみの方が大きいだろうことは自覚している
今すぐ学校を抜け出してしまいたいと内心思う自分に苦笑しながら椎名は一歩踏み出しかけてハッとする
……嫌な気配を感じる
よく知った、出来ることなら会いたいとも思わない類いの気配
幸い傍らの二人は気付いていないようで、それだけは救いだと思った
折角の誕生日、奴に遭遇したことによる不快感が伝染して台なしにでもされたらそれこそ堪らない
ちらりと伺ったそれは一定の距離を保ったままこちらに近付いてくる様子はないようだ
……放課後、恐らく地獄堂に行く辺りで接触を試みてくるに違いない
ランドセルの肩掛けを握り締める指に力が篭る
邪魔されたくない…そのためにはなんとかしなくては
一人そう決意する椎名
だがその横顔をじっと見つめているてつしに彼が気付くことはなかった
そして迎えた放課後、地獄堂への道を三人で歩きながら椎名はさりげなく周囲に目を配る
そろそろくるか…
周りに三人以外の人気がなくなった頃、背後に急にだだもれになった気配に椎名達は一斉にそちらを見た
するとそこにはやはりというべき人物(いや中身は人以外のものだからなんというべきか)が立っていた
「よう、ガキ共。今日も相変わらず仲良しこよしで三人一緒かいな」
『暁!!』
シンプルだが仕立てのよさそうなカッターシャツにすらりと長い脚のラインを見せるラフなパンツ姿でひらひらとこちらに手を振っている、暁
てつしとリョーチンががるると牙を剥くように身構える中で椎名は小さく溜め息をつきながら言った
「……何の用だよ、暁」
「何の用やて…そんなん自分が1番よぉわかっとるんやないのか?」
「………」
にまにまと相変わらず何かを企むような面白がるようないけ好かない瞳が椎名に注がれる
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