Jigokudo

□ひとりきりrainy day
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そんな時、自分はちっぽけなガキなのだろう


(…ちょっと悔しい)


窓越しに絶え間なく聞こえる雨音
世界がまるでその音しかないかのようで…少し淋しい


(あぁ…変だ)

常ならば一人でいることにそんなことを感じたりなどしないというのに


…雨なんて嫌いだ…


忌々しげに目を伏せたその時だった


「浮かない顔だね。美貌が台無しだよ…ユースケ」

静寂にも似たその中に甘やかに響く声
ギッ…と重々しい音をたてて壁が動いたかと思うとゆっくりと扉をくぐる長身がフローリングを踏み締めた

「…何しにきた」

「君に会いたくて堪らないから飛んで来た」



その歯が浮きそうになる台詞…本人に間違いない


「マーカス…」

「君も、同じ事を考えていたと…自惚れても構わないかね?」

「ふざけんな」


口ではそう言っても本音は裏腹

抱き締められるその腕を椎名は振り払う事はしなかった





きっとあんたはその腕の中に知らぬ残り香を纏っている事だろう


許せない
でも離れられない



いっそ愛してくれなけりゃこっちだって愛してないって言えるのに…なんて


落ちてくる余裕のないくちづけにふと浮かんだそんな考えさえも呆気なく押し流されていく

「マーカス…」

「ん?」

「好き…」

…やっぱり雨の日は好きじゃない

だってこんなの俺らしくないもの

それなのにあんたがそんな風に嬉しそうに笑うから
そういうのも悪くないって思ってしまうのだ






END





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