Jigokudo
□光と闇の狭間で揺れる甘美なる憂鬱
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席に案内してもらうとすぐにメニューを開いた暁は「何食う?」とこちらに尋ねてきた
「コーヒーだけでいい」
「なんやねんそれ!お子様やったら可愛らしゅうケーキやらパフェやらも頼まんかい!」
「そんな凄まなくても…」
「お兄さん金持ちやねんから遠慮すんなや、な!ほら、どんどん頼み!」
暁の勢いに押され、椎名は少々たじろぎながらも「じゃあチーズケーキ…」と控えめに答えた
「おう、お姉ちゃん。ほんならコーヒーふたつにチーズケーキひとつ、それからスペシャルジャンボチョコパいっこな」
「…………」
ノリ軽いな…そんな言葉が口から出かかってすんでで止まる
こうすればぱっと見妖怪だなんて誰が気づくだろうか。椎名だって巧妙に隠された人ならざる気を感じなければただの気さくな関西弁のお兄ちゃんと思うだろう
しかし感じられるのはそこまでだった
そこから先はどう意識を集中させてもみることは出来なかった
まるで深い闇の中にあるかのように
「…なんや、裕介。そないに見つめても読ませへんで?」
「ばれたか」
「こちとらあっさり見破れる程にペラい人生送ってへんのや、残念やったな。……それとも」
舒に暁の少しごつくて長い指が椎名の顎に伸び、まるで飼い猫を愛でるかのようにするりと撫でてからくいと上を向かされる
「そないに俺の事気になるん?お願いしたら教えたってもえぇで?」
「お前に頭下げるなんて死んでも御免だね」
「可愛ないな。子供は素直が一番やで?」
「ふ…」
黒耀の瞳がす…と細められ嘲るように彼を見つめる
まるでアリスを惑わすチェシャ猫のようなそれを一瞥して暁も笑みで返す
「そーそ、そんで幸福狩りの話聞くんやったな。どないやった?俺の蒼龍はかっこよかったやろ?な?」
「カッコイイも何もなぁ……俺達途中から別行動だったし、知るか」
「なんやねんそれ!てか何で誘ってくれへんの?!俺も行きたかった!」
「………」
正直こなくて正解だと思う。ただでさえマーカス卿が蒼龍にあれこれモーションかけていたのだから。暁なんぞが来ていたら色々面倒なことになっていたに違いない
流石にそんな面倒は御免被る
それに………
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