Jigokudo

□Thanks for Your all!
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「さ、着いたよ。目を覚ましてハニー」

「ん……」


耳元でくちづけるように囁けば切れ長の瞳がうっすらと開いて少し潤んだオブシダンが姿を見せる

小さな欠伸をひとつしてから辺りを窺うように見回してから「ここどこ?」と眼差しが問い掛ける
「何処かの丘…?何で……」

「もうすぐだ。外を見て御覧」

そう言った時丁度フロントガラスに日没のオレンジ色の光が映し出される



「…………」


藍色に染まり始めた空の上には一等星の輝き、そしてその下には蕩けるような橙の夕日



その情景にしばし言葉をなくして見惚れる彼を車の中に残して、私は運転席から降りるとブーツから荷物をとってくる




「ユースケ、ハッピーバースデー」

そう言って彼の前に差し出したのは純白のデンファレ。11月の誕生花
花言葉の「有能だがわがままな美人」というのもなかなかに彼にしっくりくる


「ありがとう。サー・ヴァレンタイン」


祝ってもらうのは嫌いではないらしく、少し照れ臭そうにしながら小さく微笑む

それがなんと可愛らしいことか



「それともうひとつプレゼントだ。目をつぶって」

視界を閉ざした彼の首筋に指を滑らせ軽く開けさせると私はそれを彼の首に巻いた



「…冷たい」

「さぁ目を開けて」

「……これは…」

それは彼の誕生石でもあるトパーズ。金の女神の台座に抱かれたこの夕陽と同じ色のそれは彼の乳白色の肌によく馴染んでいた


「本当はリングがよかったのだが、それはもう少し大人になってからの方がよいかと思ってね」

「何馬鹿な事を…」

「右手の薬指、私が予約しても構わないかね?」


今はまだ何もないそこにそっとくちづけて私は彼の言葉を待った

そんな私を黙って見つめて……少し考え込むように瞳を伏せてからふ、と笑って一言

「それまでにあんたが生きていたらね」

「ホ!言うね」

そんなことを言われたら何があろうと生き延びぬ訳にはいかないね



もう少し待てば君はきっと今以上に美しく花開くに違いないから




それを指折り数えながら、こうして一年に一度を共に過ごしていけたなら……




「愛しているよ。マイリトルスィート」



沢山の愛を注ぐから、はやく大きくおなり







END





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