Jigokudo
□Dearest hold…
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蒼龍は気を静めるとゆっくりと彼を見つめた
その中にはいつもの嫌味もからかいも欠片程に感じることがなかった
「確かに卿は凄いさ。尊敬するよ。けれど…オレはてっちゃんの側がいい。今も、これからも」
凛と告げた椎名の脳裏にかつて幸福が見せた幻覚のヴィジョンが甦る
『てっちゃん…一緒に死んでくれるのか?』
『…あぁ…』
それは自分さえも気付かなかった
気付きたくもなかった本当の想い…願望
永遠のキズナ
「そう、か…」
迷いがあったか、なんて我ながら愚問だと少し恥じながら蒼龍は彼の背中に手を伸ばして閉じ込める
「…こんな往来でセクハラすんなよ」
「気配は消してある。気にするな」
成る程、横目で回りを見ると通行人(ちらほらとしかいないが)はまるで椎名達がいないかのように普通に通り過ぎていく
しかしそれさえも彼に抱きしめられているうちにどうでもよくなってしまった
少し体温の低いその腕の中が何だか心地よいなんて思ってしまって
観念したように、それでも全部預けるのはシャクだから彼の腕に手を伸ばしてそっと掴んだ
その時だった
「椎名ー、どうしたぁ?」
ドタドタと響いた二人分の足音に二人の身体がぱっと離れる
「あー!ソーちゃんだぁ!!」
「んだよ蒼龍、来てたんならはやく入ってこいっての!!」
人数が増えた途端にその倍程にもわちゃわちゃと騒がしくなる地獄堂前で蒼龍は苦笑いを浮かべた
「ねーねーソーちゃん天界行ってきたんだろ?どんなとこだか教えてよ!」
「妖精界みたいなとこ?」
「すっげぇ宮殿とか建ってて天使が住んでるとか?」
リョーチンはメルヘンな所を想像しているのか真ん丸な瞳がキラキラと輝いている
「まぁとにかく立ち話もなんだしあがれよ蒼龍!」
「君ん家じゃないだろうが」
まるで我が家のように振る舞うてつしにツッコミをいれながら蒼龍は後に続いた
少しの核心に触れたこの手のぬくもりを脳裏に焼き付けながら
END
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