Jigokudo

□シーナンといっしょ〜シーナンと暮らそう
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〇月☆日
いつまでも家に篭っている訳にもいかないのでシーナンを散歩に連れていくことにした

と言ってもこんなに小さいとうっかり踏み潰されかねないので私の背広の胸ポケットに入れて外に出た

「外が見えるかい?シーナン」

「小さいからって馬鹿にしないでくれる?ちゃんと見えてる」

「ならよかった。行こうか」

ポケットからそっと顔を出して辺りを伺う様子が小動物のようで可愛い
いや、これはもう小動物の類いだろう

そう、気高く気まぐれでそれでふと淋しがりな顔を見せるこの子は…

(まるで血統書付きの小猫だな)

「なんかすごいくだらないこと考えてるだろ?」

「いいや?」

まるで心の中を読み透かされたかのようで一瞬ギクリとしたが持ち前のポーカーフェイスで何とかごまかす

「何処に行きたい?」

「あんまりうるさくない場所」

「了解」

小さく微笑んでやるとシーナンはぷいとそっぽを向くようにポケットの中に潜り込んだ

私は気分転換に訪れる小高い丘を目指して歩き出した

あまり人も訪れないしのんびり考えごとをするのにうってつけだからなかなかのお気に入りの場所だ



「さぁ着いたよ。出ておいでシーナン」

トントン、とポケットの入り口をノックしてやるとシーナンがひょっこりと顔を出した

「どうだい?」

「…悪くない」

「それはよかった」

シーナンをポケットから出してやるとそっと地面に降ろしてやった

「あまり遠くへ行っちゃダメだよ」

「わかってる」

比較的草の高さがない辺りをのんびりと散歩するシーナンを観察しながら私もその場に腰を降ろした

そよそよと頬を撫でる風が気持ちいい

「…シーナン?」

何気なく呼んで見ると返事の代わりに近くの草むらがガサリと揺れた

「そうしているとコロボックルみたいだね」

「そういうあんたもそうやってると無職のオッサンみたい」

「………次の仕事の間のオフなんだよ。別に仕事がないわけじゃないよ」

本当に黙っていれば可愛いのになぁ…なんでこんなにこの口は辛辣な言葉しか吐かないのだろうか

「裕介君と同棲でもしたら毎日こうなのかもしれないなぁ…」

「ユースケって誰?あんたの彼氏?」

「え、あ、あぁ…まぁね…」

同じ顔でそんなことを聞かれると何だか変な気分だ
まるで本人の前で告白でもさせられているような感覚に陥る

「日本にいる恋人でね、君によく似ている」

「そんなに…?」

「まるで目の前にいるみたいだ」

「ふ〜ん…何か不愉快」
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