Jigokudo

□Party night
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でも…またあの煩わしい場所に行くかと思うと苛々が募っていく


(はやく終わらないかな…)


そう思いながら近くの窓に視線をやった時だった


「!」

硝子に映ったありえない人物に椎名はぎょっとした


いつもの狩りの時の姿でない浮世の正装に身を包んだ日本人離れした長身
挙動ひとつひとつから漂う気品、かつ戦う男としてのワイルドさも感じさせる美貌に周囲の女性が色めきたっている


…サー・マーカス・ヴァレンタイン…



(…やばい戻ろう)

こんなところで声でもかけられた日には否応無しに目立ってしまう

そもそも母ちゃんにどんな知り合いなのか説明するのも躊躇われた(心配かけるのは嫌だ)



見なかったことにしよう
それが賢明だ


「…裕介!」


しかし向こうの歩幅や行動力は逃げようとした椎名をいともあっさりと捕えた



そして冒頭に戻る

「君もこのパーティーに来ていたなんて偶然も侮れないものだ」

「…こっちは予想もしてなかったよ」

どこぞの若作り霊能力者のように俗世間とはほぼかけ離れた生活でもしているのかと思えば…迂闊だった

「今日はご家族と一緒かな?」

「母ちゃんの付き添い」

「裕介の母君だ。さぞかしお美しいのだろうね」

頼みもしないのに傍らを陣取って機嫌よさそうに話すヴァレンタイン卿を見上げながら椎名は素っ気なく言った

「その母ちゃんを待たせてるから俺はそろそろ失礼するよ」

「つれないね。折角会えたのに」

「あんたを俺の知り合いだと紹介するのは無理があるだろう」
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