Jigokudo
□温泉に行こう!
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そして話は冒頭に戻る
他に客がいないとなればはしゃぎ倒すのにもう何の気兼ねがあろうか
身体洗いもそこそこにてつしは大浴場で泳ぎ出しリョーチンはジャクジーに入って絶え間無く湧き出てくる泡のぶるぶるとした感覚にまんまるな目をぱちくりとさせていた
椎名は椎名でのんびりと頭を洗っている最中である
と、そこにヴァレンタイン卿がさりげなく(体格が立派過ぎてもはやさりげなくでもないが)隣に座ってきた
「洗ってあげようか、ユースケ」
「別にいい…って…ぁ…」
目をつむったままの椎名の黒髪に許しもなくごつい指が潜り込んでくる
そしてそのまま髪を洗いはじめた
「痒いところはないかい?」
指の腹を上手く使い優しくだがしっかりと擦るような動きに椎名は小さく溜息をついた
……やばい、気持ちいい
まるでマッサージでもされているかのような心地よさにとろとろと身体が弛緩していくのがわかる
そうして彼に寄り掛かりそうになる寸前でサー…と温めのシャワーがかけられた
「如何だったかな」
「……ん、悪くない」
残らず泡を洗い流し持っていた手ぬぐいで軽く水気を飛ばすと卿は改めて艶を帯びた椎名の髪をくしゃりと撫でた
「よい毛艶をしている。まるで絹糸のような手触りだ」
「褒めても何も出ないよ」
「そうでもないさ。花というものは愛でれば愛でる程に美しさを増していくものだよ」
そう言って立ち上がった椎名の首筋にくちづけを一つ落としてからヴァレンタイン卿はにっと笑んでみせた
相変わらず抜目ないことだと触れた部分に指をやりながら椎名は小さく苦笑した