Jigokudo

□黄昏よりも昏きモノ
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「一緒に遊ぼ思うてな」
「断る。帰れ」

「冷たいなぁ。絶対零度やなぁ自分」
「お前限定でな」

「ははっ、限定やて何かトクベツーな響きするわぁ」

「そりゃよかったな」

そう言い捨てると椎名は再び歩き出そうとして、立ち止まった
否、正確には止められたというべきか

彼の左手が椎名のそれをぐっと掴んでいたから

ぞっとする程ひんやりとした体温
いや、体温なんて元々持ち合わせてなどいないのかもしれない
こいつは妖怪なのだから


別世界の扉を開いたあの日から様々なものを見てきた。体験してきた
死に神とだって戦った。冷酷な殺人鬼とだって対峙した


けれども目の前のこの男は今までのどれとも異なったもののように思える

だが、それだけに椎名に忘れかけていた感情を微かだが沸き立たせていた


少し強張った手を引き寄せて腕の中に閉じ込めると、暁は殊楽しげに低く昏い笑みを浮かべた


「今、畏れたやろ?」

「っ?!」

「妖怪と会うた時なぁ、畏れたら負けなんやで」


そう耳元で囁いた瞬間椎名の全身が凍り付いたかのように硬直し、指先すら動かなくなった

「ぁ……?!」

「つ か ま え た」

冷たさが全身を包み込み魂すら凍えてしまいそうになる
後ろから伸びた手が顎を押し上げて無理矢理上を向かせる


椎名の目に映る紅い双玉。人ならざるモノの輝き

それがゆっくりと下りてくる


そして唇に冷たい肉の感触が触れたかと思うと次の瞬間にはぬるりとした粘膜が間に捩込まれた

「っ……」

かろうじて動いていた思考がそれを口づけだと認識したのは口腔に鋭い痛みが走ってからのことだった

搦め捕られた舌がじわりと熱を帯び鉄臭い味がその上に広がる


視界の端に映った暁の瞳が恍惚に細められる


「ン…くう…っ…あ…」

突き立てた牙に傷付いた舌から溢れる血ごと味わい尽くすように何度も口腔を愛撫し、絡んで吸い上げて
執拗なそれに抵抗すら出来ずされるがままに蹂躙される


この時間を終わらせることが出来るなら死んでもいいとさえ思う程の屈辱だった




やがて気が済んだのかちゅぷ…と濡れた音を立てて唇が放されると椎名の身体が漸く金縛りから解放された






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