Jigokudo
□となりの暁さん
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「ぐっふ…」
的確に決まったそれに軽く悶絶している暁に冷たい一瞥をくれてやりながら椎名はガラス戸を閉めると、机の上の経典を手にとって部屋の中に結界を張った
そしてカーテンを閉めると学校へ行く支度を始めた
仕事で先に家を出た母ちゃんを見送って一人で朝食をとっていた椎名に悪夢は容赦なく次の魔の手を伸ばしていた
ピンポンとインターホンが鳴らされカフェオレを啜っていた椎名は思わず朝食の手を止めた
こんな時間に誰だろう?…いや、何だか気のせいではない嫌な予感がひしひしと感じる。その証拠に先程から玄関の向こうの霊視がまるで出来ない
間違いない、アレだ
ここまでくるといい加減しつこいものだがそのしつこいのが奴なのだから仕方もないか
なんにせよこの状況は非常に思わしくない
椎名の家はマンションだ。当然勝手口なるものが存在しないから必然的に玄関であれと鉢合わせなければならないわけで
それを思うと気が重くなる
かといってこのままというわけにもいかない
(逃げるのも正直いい気分じゃないしな…)
朝食を切り上げ、ランドセルを背負い、ポケットには経典と式鬼の束
未だピンポンラリーが続く玄関に向かい、靴を履くと椎名は一応覗き穴で顔を確認してから鍵を開けて一気にドアを押した
「おっ、危なっ」
角がブチ当たる寸前でひらりとそれを避けて後ろに引いた暁に椎名はあからさまに舌打ちをした
「……暁の癖に生意気な」
「ス〇オ君かっ!」
「とりあえずそこどけ、邪魔」
会話になど乗ってやるかとばかりにはねつけた椎名の態度などどこ吹く風とばかりににっかーと笑みを浮かべた暁は何処に持っていたのか、のし紙が巻かれた箱をずずいと前に差し出してきた
ちらりと見えたロゴはフォションのものだった
「……何これ」
「ちゅー訳で今日から隣に越してきた松原いいますぅ。どうぞよろしゅうに。あっこれつまらんものですが…」
「いらん、帰れ」
「ま、ま、遠慮せんと」
半ば無理矢理箱を手に押し付けられて椎名は仕方なしにそれを受け取る
(フォションのアールグレイギフト……いい趣味だ)
くれた相手が暁じゃなければセンスがいいと喜んだものを
そこまで考えて、ふと椎名は表情を曇らせた
「……ちょっと待て。今なんて…」
「せやからな、今日から隣に越し…」
「はぁっ?!」
越してきた?隣に?
あの暁が?!!
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