Jigokudo

□となりの暁さん
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うっかりスルーしかけたとんでもない発言に椎名は声を荒げかけてなんとか抑えた

今は朝、ここでぎゃいぎゃいと騒いでいたら否応にも悪目立ちしてしまう

椎名は玄関に貰った箱を放ると玄関を閉めて鍵をかけ、へらへらとこっちを見ている暁を無視してエレベーターへと歩き出した

「おっ、自分何処行くん?」

「見りゃわかるだろ」

「せやかて、自分いっつもサボってるやん。今日も休んでも…」

「お前なんぞに割く時間は一瞬だってない」

「まーまー、そないに急がんと。なっ?」

がしりと肩を掴まれ椎名はぴたりと止まる

振り払おうとするが手はびくともせず、逆にズルズルと後ろ…暁の方へと引き戻されてしまう


「……放せ変質者」

「変質者やないて、となりのおにーさんや」

「気色悪い言い方するな」

「でもええ響きやろ?」

言いながら暁は何を思ったのかいきなり椎名の身体を小脇に抱えて歩き出した

「なっ…?!」

「せや、まだ引っ越し蕎麦まだ食うてへんねん。一緒にどない?」

「いらん!離せ降ろ……むぐっ?!」

こうなったら近所迷惑も何もあったものではないと声を張り上げようとするより先に、手慣れた感じで椎名の口を片手で塞いで暁は丁度椎名の隣の部屋のドアを器用に足で開けて入った


ぽいっ、と荷物のように部屋の中に放り込まれたその後ろでガチャ!と鍵のかかる絶望的な音が響く


「こ…っの犯罪者!」

「あーあー聞こえへん」

鼻歌まじりに椎名の腕からランドセルを引っこ抜き、靴も引きはがすように脱がしてしまうと暁は椎名の手をとりリビングへと引っ張っていく

見かけ以上に暁の手の力は強い。何かのスポーツをやっていたらしい屈強な身体、いかに幾多の死線をくぐり抜けてきた椎名といえども物理的な力の差では恐らく…こいつには勝てない

「お客さん第一号やな」

「……蒼龍じゃないのか」

「蒼龍捕まらんねん。運命のイタズラっちゅーやつや、多分」

「………」


その内の七、八割は意図的に避けられているだろ……と思いつつもあえて言わないでおく
どうせ言ったところでこいつは毛程も動じない

それよりも椎名は疑問で仕方なかった


「だいたい何でうちの隣越してきたんだよ……ああ見えて蒼龍の奴滅多に日本にこないぞ」


確か聞いた話では奴は今ヨーロッパを中心に降霊会やら研究会などに引っ張り凧状態らしい

それならせめてヨーロッパあたりにでも引っ越せばひょっとしたらばったり会うこともあるかもしれないのに……多分





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