Jigokudo
□となりの暁さん
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そう思っていると暁はまたあの笑みを浮かべてさらりと言った
「あぁ、だって俺裕介のことも好きやねんもん」
「………キモッ」
「酷っ!」
気軽く好きだなどと言う暁に椎名は心底嫌そうな顔をして吐き捨てるように返した
「しかも堂々と二股宣言とか信じられない」
「えぇやん。好きなもんは好きで、欲しいもんは欲しい。そういうもんやろ」
「そうなる程に現実がそう甘く出来てるとか思うな」
まだろくな家具の置かれていないがらんどうなリビングに佇んだ椎名の背後から暁が枝垂れかかるようにぺたりとくっついて腕を絡ませる
馴れ馴れしいそれに椎名は諦めたように溜め息をついてされるがままになる
「まぁな…だからこその布石っちゅーやつや。おとなりのお兄さんっちゅー美味しいシチュでな裕介と仲良ーなってな」
「ありえない」
「ありえないっちゅーことはありえんやろ。そんでゆくゆくは酒池肉林ハーレム的な……」
「生まれ変わってもありえない」
「おー、そないなこと言ってもえぇんか?もし俺が前世で裕介と恋仲やったなんて…」
「絶対ない。たとえあっても今の俺には関係ない」
「……せやな。じゃあ俺は今の裕介が好きや」
ちゅ、と耳の後ろに口づけを落とされ椎名はぐっと身を固くした
「お?ここ感じるん?」
「ふざけんな」
「きもちーことしたい?言うてくれたらおにーさん頑張って…」
「食いちぎるぞばかつき」
「………なんや、自分知っとんの?」
無駄に格好いいバリトンで囁いて首筋のラインを指先が撫でる
その官能的な動きが朝の爽やかな筈の空気とひどくちぐはぐて、余計に卑猥な感じがする
「…勘違いするな。知識としてだ」
「ませてそうやもんなぁ自分。本当は興味あるんちがうん?」
背筋を舐める指がズボンの上に触れる
そして割れ目の間の奥へと続くそれを指で押しながら暁が笑う
「ここに、おにーさんのふっといの入れたらどうなるんやろ…ってぶっ?!!」
調子づいてきた暁の顔面に経典を叩き込み腕の中から抜けると椎名は暁に触れられた箇所を手でぱんぱんと払った
「全く朝からついてないぜ…暁なんぞ見たってだけでも不愉快だってのに」
「そんな気にせんでも、ちゃんと嫁に貰ったるさかいに♪」
「死んだほうがマシだな」
「酷っ!」
蒼龍に構って貰えないとばっちりかとも思ったがどうにも違うそれは、椎名の日々の憂鬱のひとつになることは間違いないないようで
気のせいではない頭痛に思わず溜め息が洩れる
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