Jigokudo

□HELP ME??
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「ここでは見せられない」

「なんでだ」

「ミッタンがしょっぴかれるから」

「は…?」

椎名の意味深な言葉に一瞬首を傾げるが、何となく言いたいことを理解した俺は椅子から立ち上がって椎名の手を引いて部屋の隅に連れていって入り口から死角になるように立ってから言った


「……これでいいか」

「………」

椎名は小さくひとつ頷いてから仕立てのよさそうなシャツのボタンを外した

布地に隠されていたそれは意図的につけられたであろう鬱血の跡。俗に言う“キスマーク”というやつだ


「これは……」

「昨日草むらに連れ込まれてつけられた。急所蹴り上げて逃げたけど」

「連れ込まれたぁ?!」

「部屋は一応入れないようにはしてるんだけど、外で移動してる時は手が打てないんだよ。向こうもそれがわかってるから遠慮してこないしな」

シャツのボタンをつけ直しながらさして怯えた様子もなく椎名は言う


「そいつの心当たりはあるのか?」

「心当たりもなにも、そいつ俺ん家の隣に住んでる」

「はぁぁぁぁ?!」


どうやら問題は思った以上に深刻そうだった






とりあえず携帯電話の番号を仕方なしに教えて俺は椎名を家に帰した
わざわざマンションの……部屋の前まで送ってから俺は自転車を引いて派出所まで戻った


何だかひどく気疲れした






それから三日位は普通に平和だった


平和といっても相変わらず三バカは忘れた頃に俺をおちょくりにきたしそこそこに事件もあったが、例の件に関しての動きはないらしく、俺のプライベート用の電話に奴の着信が入ることはなかった


派出所の机の上で沈黙する携帯電話を見つめながら俺は安堵のような拍子抜けのような複雑な思いに駆られていた


「ひょっとしてこれは新手の悪戯だったのか…?」


あまりに信憑性がありそうだったからつい信じてしまったがただ単に騙されていたという可能性も捨て切れない

普段からの心掛けさえよければ心の底から心配もしてやれたのに…

「……巡回にでも行くか」


未だ黙り込んだままのそれを制服のポケットに突っ込んでから俺は椅子から立ち上がって派出所の傍に停めてある自転車に乗った


いつものルートを巡回しながら俺は周囲を見回し、時折道で固まってくっちゃべっているおばちゃんに声をかける


そんないつも通りの風景。微々たるものは違えどそんなに変わりばえもしないそんな日になると、そう思っていた




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