Jigokudo

□HELP ME??
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「……?」

路地裏の…薄暗い道の先に誰かがいる気配がする。よく耳を澄ませてみれば言い争っているように聞こえなくもないが…


「おい、そこに誰かいるのか…?!」

その人影が椎名本人であることの確証はない……とりあえず当たり障りのない呼びかけをしてみる

しかし返事はない。というより明らかに無視されている、と言った方が正しいか

俺は意を決してもう少し近くに歩み寄ってみた


そこにいたのは


「ん…?なんや、人がお楽しみ中に…出歯亀か?」


椎名らしき子供を壁に追い詰めているいかにも怪しい感じの男が面倒臭そうにこちらを見遣っていた

「っ……三田村巡査…」

男の影からちらりと見えた椎名の懇願するような瞳に、これはただごとではないと直感し俺は手にしている警棒を構えた
…不覚にも一瞬ドキリとしたのは気のせいだと信じたい

「大人しくそいつを解放しろ!」


そいつを睨みつけ威嚇代わりに怒鳴ってやると暗闇の中でギラギラとした赤い瞳がねめつけるようにこちらを睨んだ

「なんやお兄さん……やる気か?」

その視線に何処か人ならざる気配を感じ背筋が僅かにぞくりと震えた

その時、微かに空気が揺れるような気配を肌に感じ俺は咄嗟に腕で顔を覆った。

次の瞬間、ありえない程の強い突風に周囲のゴミが巻き上げられた


「うごっ?!!」

見えない視界の中で何かが壁にたたき付けられるのと何やら蛙でも潰れたかのような声がすると同時に小さな手が俺の腕を掴んでぐいと引っ張った

「行くぞ」と言わんばかりのそれに従うままに踵を反して走れば、不意に瞼に明るい日の光がちくりと突き刺さり恐る恐る目を開ければそこは既に裏通りの入口だった


「ミッタン」

「だからそう呼ぶんじゃ……っ?!」

またいつものおちょくったあだ名で呼ばれて怒鳴りかけた声が、思わず止まった



そこにあったのは、目を涙に潤ませ怯えた表情でこちらを見上げる椎名のよくととのった顔だった

いつもは生意気さばかりが表立っていたからそんなことも気にしなかったものだが、こんな縋るような表情を見せられて免疫なんぞない俺はガラにもなくしどろもどろになってしまった

「し……椎っ…」
「凄く……怖かった……」

腕にぎゅうと抱きつかれそんなふうに囁かれるともう怒る気さえ情けなくも削がれていく





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