Jigokudo
□HELP ME??
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こんな殊勝な態度を取られると、こいつもまだほんの子供なんだなと思い知らされる
いつもは大人びているというか子供らしくない面ばかり見ているから、ついそんな当たり前のことも忘れてしまっていた
「お前そういえば携帯は?」
「あ、壊されちゃって…」
「その……新しいの買ったら、番号……聞きにこいよな」
前はあれほど教えるのが嫌だったのに、気付けば自然とそんな言葉が口をついて出ていた
椎名が切れ長の瞳をきょとんとさせてから、ふ…と俯きこくりと控えめに頷いた
思わず息を飲みかけたその仕種を横で見つめながら、こんな椎名だったら守ってやるのも悪くはないな…などと俺は考えていた
三田村巡査に家の前まで送ってもらい、まだ何者も帰ってきていないリビングを通り抜け椎名は自室へと向かった
部屋一周を反閇でぐるりと廻り念入りに結界を張ってから閉められたカーテンを開けるとそこには椎名の帰りを待っていたかのように、コーヒー片手に暁がひらひらと手を振っていた
「おー、おかえりぃ。随分遅かったなぁ」
「ただいまストーカー。こんなに早くてよっぽど暇人なんだなアンタ」
「しかしケーサツ呼ぶとか反則と違うか。まぁ呼ばれたところでどってことないけどな」
「犯罪者は警察に突き出すのが善良な市民の義務だからね」
「してへんやーん、愛の営みやろあんなん」
「立派な暴行罪だ変態ストーカー」
「男が変態で何が悪いねん?!」
えへんと開き直る姿にこれ以上は何を言っても聞かないだろうなと思い椎名は電話でも切るようにカーテンを引いて会話を打ち切った
「……なぁ」
「………」
話す気などとっくに失せているのに暁はそんなのはどこ吹く風に声をかけてきた
本当にこれが電話だったら楽だったろうに
「ほんで結局あれ、何?わざわざ式鬼まで打って呼んどったけど、ナイトっちゅーにはなぁ…」
あれ、とは三田村巡査の事を言っているのだろう
彼の言わんとすることはわかる
あれで暁を完全に何とか出来るとは椎名だって思っていない。確かに腕っ節も度胸も昔黒龍党のヘッドだっただけあり一般的なそれよりかなりある
だが暁は人でない上に椎名にも視えない部分の多いかなり厄介な存在だ
だが……
「…変態に対する保険はなるべく多いに越したことはないからね」
「保険?囮の間違いと違うか?」
「ふ……何のことやら」
「怖いお子様やなぁ、自分」
そう言ってからからと笑う暁に椎名も口角をにぃと吊り上げた
巻き込めるものは巻き込んで
使えるものはとことん使う
強かに 狡猾に
それもまた子供の特権というものでしょう??
END?
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