Jigokudo
□Don't touch my dear!
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思い当たる節なんて今日に限ってはひとつしか思い当たらない
何で知ってんだと思いながらも、まぁこいつなら知っててもおかしくないなと考え直して椎名は忌ま忌ましそうに彼を睨み返す
「別にお前に祝ってもらいたいと思わないんだけど」
「人の厚意は素直に受けとくもんやで、裕介」
「そんな裏がありそうな厚意、有難迷惑だね」
「そうだそうだ!」
「帰れ関西弁妖怪!」
「なんやねん、関西弁disったらあかんねんでてつし」
ガキ共の戯言などどこ吹く風とばかりに耳をほじくると暁は軽やかな足取りで裕介の前までやってきた
「俺と来い裕介。夢みたいな時間プレゼントしたるで?」
言いながら伸ばした手の甲にぱしりと何かがぶつかった
「……なんやこれ」
衝撃で弾かれたそれはひらりと一枚の紙切れに変わりひらひらとアスファルトの上に落ちた
真っ白の上に描かれた星のようなマーク……式鬼だった
「椎名に触んな!」
身長が頭二つ分位裕に違う暁に怯むことなく鋭い眼光を向けるてつし
頭のてっぺんから爪先までぴりぴりとした緊張感で武装された彼とは対称的にへらへらと余裕さえ感じられる軽薄な笑みを浮かべた暁
二人の間でばちりと火花散るような張り詰めた空気が流れ、その傍らのリョーチンは椎名を守るようにそっと背に庇った
「随分ちっさいナイト様やなぁ。そんなんで大丈夫か?」
「うるせぇっ!」
張り上げた声がぱりぱりと雷のように周囲の空気を震わせる
その辺の高校生…いや大人までならいっぺんにビビらせることも出来ただろうが、今回は相手がまるで違う
こんなのは威嚇にすらならないだろう
けれどここで自分が身体を張らなければ椎名は連れていかれてしまうかもしれない
嫌だ、それだけは
今日は椎名にとって一年で指折りの特別な日だから
守るんだ、オレが。オレ達が
「てっちゃん!」
「おう!」
リョーチンの声を合図にてつしは素早くポケットから呪札を取り出しすと一気に吠えた
「なうまくさまんだぼだなん いんだらやそわかっ!」
「お…」
至近距離の都合上威力は控えめに、だが強い閃光は一瞬だが暁の目を眩ませ目をつむってそれを回避したリョーチンはその隙に椎名の手を引いて走り出した
てつしも直ぐさま踵を反すと、二人に追い付くようにフルスロットルで駆け出した
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