King gainer
□Flapping like bird
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どうか僕に踏み出す勇気を
『ゲイナー・サンガ様!あなたには「キング」の称号が与えられました!』
王座防衛連続200回達成、そして与えられた『キング』の称号
別にそれを目指してやっていたわけじゃないけど、まるで誰かに自分の存在を認めてもらったようで
悪くはなかったがそれが全てを変えるきっかけになるなんて、その時の僕は知る由もなかった
「エクソダスの容疑で連行する」
それはいつもと変わらぬ日常をいとも容易く切り裂いた
訳もわからないままいきなりシベリア鉄道に身柄を拘束されて…今思えば、僕がオーバーマンアリーナで頭角を現わした頃から既にマークはされていたんだろう。でなければキングになってものの数十分で即確保なんて事出来る訳がない
そんな理不尽な理由で投獄されて…しかもよりにもよってこの世で一番憎んでるエクソダスに僕が関与しているという屈辱にも等しい容疑で
この時ばかりはこの世に神もヒーローもいないんだと痛感したものだ
そんな絶望しか転がっていない牢獄の中で
僕はあの男と出会ったのだった
無造作に床に転がされた傷だらけの体
乱れた深緑の髪
この辺りでは珍しいだろう濃い褐色の肌
その人の周りの空気だけが何故か違っているような気がした
「ゲイン・ビジョウ…黒いサザンクロス」
テレビの悪役みたいな顔した看守が言っていた名前、彼の名前
魔法みたいに何度も頭の中に響いてそれがしっかりと刻み込まれて
不思議な感覚だった
そしてそれに更に拍車をかけるかのようにその男は、その場にあったコップと自身の腕だけで看守達をあっという間に床に沈めたのだった
それはまるでヒーローみたいにかっこよくて
僕は自分の無力を噛み締めると同時に、その強さかっこよさに憧れたんだ
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