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□好きで、好きで、好きで
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「ねぇ、謙也くん。今日、一緒に帰らへん?」


「ええでー」


「帰りに友達の誕生日プレゼント買いたいんやけど、付き合うてくれる?」


「おん。そういや、お前は何月生まれやったっけ?」


「ひどーい!彼女の誕生日忘れるなんてありえへんやろ!!」


「すまん!友達のとかと色々ごっちゃになってもうて…」


「もー!えっとねー…」



彼氏彼女の何気ない会話。
相手が他人ならこんなに聞き耳を立てることは無いだろう。
でもそれが他人じゃないから、私は2人の会話を聞いているのだ。
だって相手は私の好きな人だから―。


謙也に彼女が出来るなんて思ってもみなかった。
だから私はいつまでも謙也のそばにいれると思ってた。
でもそれは私の勝手な思い込み…願望だった。
だから謙也に彼女が出来たと知った時は、1人ベッドで泣いた。



「あはは!何や、それ!!やっぱ謙也くんといると楽しいわー!」


「俺もや!お前、おもろいしなー!!」


「謙也くんのがおもろいやろ!」



2人の楽しそうな会話を毎日聞くのはとても辛い。
聞いていると目頭が熱くなってくる。


何で私だけこんな辛い思いをしなくちゃいけないの?
私だけ辛い思いをするなんて不公平じゃん。
みんな私と同じ思いをすればいいのに。



「それじゃ、放課後!」


「おん。楽しみにしとるわ!」



彼女さんが自分のクラスに戻っても謙也は私に話しかけてくれない。
それどころか、私の方を向いてさえもくれない。
楽しそうに白石たちと話している。


話しかけてほしい。
出来ることなら彼女にしてほしいけど、そんな無理なことは望まない。
ただ、せめて、話しかけてほしい。


こんな些細な願いでさえも、謙也には届かないのだろうか。




好きで、好きで、好きで

(こんなにも好きなのに)
(なのに、私の想いは届かない)


End.


→後書き


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