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□残ったものは
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私は光と付き合っている。
光といるとどんな時でも楽しいし、光と同じ時間を共有出来るのはとても嬉しい。
これからもずっと光と一緒にいたい。
そう思ってたのに―。



「悠さん、別れましょう」


「…え…」


「もう俺、耐えられないんすわ。悠さんが謙也さんや部長と楽しそうに話してるのを見るの」


「…じゃあ!もう謙也や白石とは話さないようにするから!!だから…」


「…もう決めたんで。…ほな」


「光…!」



光は振り向かずに行ってしまった。
別れようというのは本気なのだろう。
納得いかないけど…光が決めたのならそれに従うしかない。
無理矢理心を落ち着かせ、教室に戻った。



それから光は3年の教室に来なくなった。
移動教室ですれ違った時も、声をかけても返さずに行ってしまう。
廊下で光を見かける度、胸が締め付けられた。



ある日の帰り道。
光が知らない女の子と2人で歩いているのを見た。
「財前くん」と呼んでいるから、たぶん2年生だろう。



「ねぇ。これから財前くんのこと、『光くん』って呼んでもええ?」


「…おん」



私は察した。
2人は付き合っている。
光がまた彼女をつくるなんて意外だけど、この目で見たのだから事実だ。
胸がきゅーっと締め付けられて、目の淵に涙が溜まる。


やっと気付いた。
私にとって一番大切だったのは光だ、と。
他の何よりも大切だった。
なのに何で手放してしまったんだろう。
あの時、手を掴んででも引き止めたらよかったのに。


光はずっと私についてきてくれた。
私が怒っている時も、悲しんでいる時も、喜んでいる時も、いつも私といてくれた。
気が付けば、隣には光がいた。


こんなに大切にしてくれたのに。
こんなに大切だったのに。
何で今まで気付かなかったんだろう。
私がもっと早く気付いていれば…。


今の私には何も無い。
大切だった人を手放してしまった今、私に残るものは何も無い。




残ったものは

(あるのは、ただ)
(後悔だけ)


End.


→後書き


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