Short

□本当の気持ち
1ページ/2ページ



私は他の人に比べて暗い。
自分で言うのもなんだが、自覚しているのだからしょうがない。
クラスの子が、



「朝比奈さんって黒いオーラが漂ってるよねー」



と言っているのを聞いたことがある。
出してないはずなんだけど…。


私は今まで友達が出来たことが無い。
別に必要無いし、いたっていなくたって変わらないと思うから。
でも、クラスの子が友達と楽しそうに話しているのを見ると、少しうらやましく思ったりもする。
私に友達が出来るはず無いけど。


そう。
私はこれからも1人で生きていく。
誰かと一緒に生きていくなんて考えられない。
なのに―。



「朝比奈さん」


「…白石くん」


「この問題教えてくれへん?」


「…他の人に聞いて」


「誰も教えてくれへんのや。せやから、教えてくれへん?」



嘘だ。絶対嘘だ。
人気者の白石くんに教えない人がいるはずが無い。
何でよりによって私に?



「…ごめん。これから…用事があるから」


「あっ…」



…逃げてきてしまった。
白石くんに話しかけてもらえるなんて、もう二度と無いのに。


実は、ひそかに白石くんに憧れていたりもする。
憧れの人から話しかけてもらえたのに。
逃げるなんてありえない。


自分の行動に後悔しながら、家路についた。



それから、白石くんはちょくちょく私に話しかけてくれた。
私も少しずつだけど、自然に話せるようになっていった。
白石くんと仲良くなれるなんて思ってもになかった。
それどころか、また話せるなんて思ってなかったのに。



そしてある日、私は気付いた。
白石くんへの気持ちは『憧れ』ではなく、『恋』なのだと。
白石くんを見ていると胸がどきどきして。
気が付けば目で追っていて。
白石くんのことばかり考えていて。


でも、この気持ちは伝えられない。
伝えたら白石くんが困るから。
私の個人的な感情で白石くんを困らせたくないから。
だから、言わない。



その日から、私は白石くんに対する反応を変えた。
白石くんに話しかけられても、聞こえないふりをしたり、そっけない態度をとるようにした。
そんな反応をするのは正直、胸が痛んだ。
でも、白石くんの為だから。


私の気持ちを白石くんに伝えることは出来ない。
だって、私と白石くんじゃ住む世界が違うから。
この気持ちは永遠に伝えることは出来ない。
今日も私は本当の気持ちを言えずに、1日を過ごしていく。




本当の気持ち

(今、思うことは、)
(あなたと同じ世界に生まれたかった)


End.


→後書き


次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ