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□言えない言葉
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財前くんは女子からの人気がすごい。
同学年はもちろん、先輩からも人気がある。


実を言うと、私も財前くんに恋をしている。
でもライバルは多いし、何より私と財前くんが釣り合うわけが無い。
だからこの気持ちは胸の奥にしまっておこう。
そう決めたんだ。



「ねぇ、悠。あんた、財前くんのこと好きやろ?」


「え!?」



放課後。
友達に突然聞かれて、思わず変な声を出してしまった。
誰にも気付かれないようにしていたのに…。



「な?そうなんやろ!?」


「ち、違うよ!私が財前くんを好きなんて…考えられないよ…」



否定するしかなかった。
ここで『好き』なんて言ったら、たちまち噂が広まるだろう。
そうしたら財前くんが困るから。
財前くんを困らせたくないから。
だから、否定するしかなかった。



「ホンマに?」


「…本当だよ。ただのクラスメイトにしか…思えないし」



これで良かったんだ、これで…。


その時、ドアの向こうで音がした。
ドアを開けてみると、そこには―。



「…財前…くん」



何で財前くんがここに?
部活中じゃなかったの?
今の話、聞かれてた?



「朝比奈、俺のこと『ただのクラスメイト』としか思ってへんかったんや」


「…」


「俺、結構お前のこと気に入ってたんやけどなぁ…残念やわ」


「…!」



そう言うと、財前くんは行ってしまった。


違う…違うのに。
本当は大好きなのに。
この気持ちを言いたかったのに。


でも、言えなかった。


臆病な私を、許して。



言えない言葉

(あの時、言えなかった言葉)
(いつかあなたに届くでしょうか―?)


End.


→後書き


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