Short
□望みが叶うというのなら
1ページ/2ページ
「…朝比奈さん」
「おー、財前。来てくれたんだねー」
今日は卒業式だった。
式の後、俺は朝比奈さんに話しに行った。
「当たり前っすわ。もう朝比奈さんとは…会えないんやし」
「卒業したからって、全く会えないって訳じゃないよ」
「でも…少なくとも、前よりは会えなくなるやろ」
朝比奈さんと会えない―。
そう思うだけで、目頭が熱くなる。
「大丈夫だって。卒業しても会いに行くから…絶対」
朝比奈さんはそう言ってくれてるけど、会えないのは目に見えている。
朝比奈さんだけでなく…俺も。
「それじゃ…もう行くね。バイバイ」
―バイバイ。
それは、もう会えないということを意味しているのか。
だとしたら、なんて残酷なんだろう。
もしも、1つだけ望みが叶うというのなら。
あと1年早く生まれたかった。
朝比奈さんと、もっと一緒にいたかった。
卒業式なんて来なければいいのに―。
望みが叶うというのなら
(これからもずっと)
(君に会いたい)
End.
→後書き