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今年、俺は部長になった。
部長という仕事がとても大変だということはわかっている。
だから、その責任の重さに少しばかりプレッシャーがかかる。
少しだけ不安だった。


そんな時、朝比奈は俺を助けてくれた。



「財前ー」


「何や」


「財前、今年、部長になったんでしょ?」


「ああ…まぁ」


「私、応援してるから。がんばれ!」



そう言って、朝比奈は俺の背中を押してくれた。


何故だろう。
たったそれだけのことなのに。
気持ちが少し軽くなった。



それからしばらく経ち、俺も部長の仕事に慣れてきた。
ただ慣れると同時に、それ相応の責任が重くのしかかってくる。
―皆がテニスを楽しめるように。
―遠山たちの力を引き出せるように。
それが自分の役目なのだと。
とても重荷だった。


そんな時、また朝比奈が俺を救ってくれた。



「…財前!」


「朝比奈…何や」


「部長の仕事…大変?」


「まぁ…部長やし。大変なのは覚悟しとったから」


「財前、さ…無理、してない?」


「無理せんといかんやろ」


「でも、無理しすぎるのも良くないよ。財前が倒れたりしたら、皆困るし…」


「せやけど、部長なんや。他人より無理せな、やっていけん」


「だけど…」


「もうええやろ。お前には関係あらへんし」


「…財前」


「…まだあんのか」


「がんばらなくていい」



朝比奈はそう言って、俺を抱きしめてくれた。


突然のことに俺も戸惑った。
でも、不思議と安心した。



「私がいる。私がいるから…だから、あんまり無理、しないで」



嬉しかった。
1人じゃないんだと言ってもらえて。



「…有難う」



顔を見ながらは恥ずかしいから。
だから下を向いて、小さく言った。
―有難う。




全部

(「がんばれ!」と背中を押したのも)
(「がんばらなくていい」と抱きしめてくれたのも)
(全部、君だった)


End.


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