Short

□痕
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あー、イライラする。
朝比奈が他の男と話してるのを見ると、無性に腹が立つ。


あ、また違う奴と喋りおった。
俺以外の男と話すなんて生意気やわ。
ムカつく。



「朝比奈。ちょお、こっち来い」


「どうしたの?ユウジ」



満面の笑みで駆け寄ってくる朝比奈。
それが何故か勘に触って。
さっきまで他の男と話しとったのに、何やそれ。
ホンマ、ムカつく。


俺は朝比奈を連れて向かいの空き教室へと向かった。
入るなり鍵を閉めて、朝比奈を壁際に追い詰める。



「お前、さ……他の男と喋り過ぎちゃう?」


「そんなこと言ったって、話しかけてくるから…」


「シカトすればええやろ」


「そ、そんなの…」


「朝比奈、生意気」



ポケットから果物ナイフを取り出す。
それを朝比奈の頬に当てると、ぷつっという皮の切れる音が聞こえた。
鮮やかな赤色をした血が朝比奈の頬を伝う。



「や……め、て……」



恐怖にひきつる朝比奈の顔。
そんな顔もええと思う俺は何なんやろな。



「お前は俺だけ見てればええねん」


「み……てる、よ……。ずっと……」


「……ムカつく」


俺のその言葉でか、切られた場所の痛みでか、朝比奈の目から涙が零れ落ちる。


そんな朝比奈に向けて、俺は言った。



「もうええ……。お互い、傷付くのはもうやめようや」



妖しい笑みと共に。



「一緒に……楽になろうや」





(頬に付けた痕は)
(愛している証)


End.


→後書き


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