短編

□The day which curses fate
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「分霊箱って知ってる?」


「な…何を…」


聞き取った言葉に聞き覚えがあるかないかと問われれば、あった。
だからこそ、信じられなかった。
こんな…こんなことってあるのか…?

今だって、リドル先輩は相変わらずニコニコ笑っていて…動揺している自分がおかしいのかと錯覚に陥る。

「その様子だと知ってるみたいだね」


「…っ……」



喉が弾んだ途端息が、詰まった。
リドル先輩の笑顔は相変わらずニガテで、今ならその意味がよく分かる。

この人は危険だ。
纏う雰囲気に自身の本能が危険信号を出している。
危ない。危ない。と急かされる。

誰か、…そうだ、ダンブルドア先生っ……!


震える足で立ち上がり、ようやく僕は気が付いた。

周りが異様に静かであることに。



「ガッカリさせないで欲しいな」


「…なに、を…言って…」


この場から逃げようと慌てて辺りを見渡せば周りには他の生徒が居なかった。
無意識にリドル先輩に視線を移せば酷く残念そうな目で僕を見ていた。

それは、僕が今まで見てきた先輩の笑顔からはかけ離れていた。



「ただ君が知っている情報を提供してくれればいいだけだ…どこまで知っているんだい?」


提供すればいいだけ、という言葉が脳に甘く痺れるように響いた。
でもそれは魅力的でもあり、とても恐ろしい。



「…知りま、せん……」


「嘘が下手だね。知らないなら、そんなに怯えないだろう?」


「ッ…」


図星だった。
本当に知らないなら僕はいつも通りリドル先輩を適当にあしらっていたはずだ。

動揺を顔に出してしまった時から僕の運命は決まっていた。



「…魔法の中でも最も邪悪な発明。人はそれを説きもせず語りもしない。僕が知っているのはそれだけです。」


今度は嘘をつかなかった。
どんなに平常心を保ち嘘をついても、リドル先輩ならきっと見抜いてしまうだろう。ならば嘘をついても無駄だ。


リドル先輩は僕の言葉を聞くなり、口元に弧を描き目を細めた。
満足いく返事だったようで、僕の頭を優しく撫でた。

ホッとしたのも束の間、僕はそのまま意識を失ってしまった。





「これで確認はできた。後はタイミングを見計らって先生に追求するだけだ…。〇〇、君には僕の役に立ってもらう。」



リドル先輩が僕を気絶させ左腕に闇の印を刻んだことに気付くのは、目を覚まし夢だと錯覚した僕がリドル先輩に会ってからだった。



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