短編

□The day which curses fate
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僕の一日は本を読むことで始まり本を読むことで終わる。
そう言っても過言ではないだろう。

周りの人達が関心を抱いている恋愛だとか友情だとかいうものに僕は疎かった。

それでも本を読むことだけは幼い頃からずっと好きで、それは今も変わらない。

これからもずっとそうなんだろうと思うし、本を読むことが好きな僕はそれに満足していた。

そんな僕を周りはおかしい奴だと笑ったが、皮肉を言わせてもらえば勉強もせずに青春だとか言って遊び惚けている連中の方がおかしいと思う。

お互いが解せぬ存在ならば、関わらなければいいのに。
そう考えた僕は、周りと我関せず本を読むことに耽っていくつもり、だけれど…






「やぁ、〇〇」


「……」


そう、この人…
トム・リドルが…リドル先輩が、僕に関わらなければそうなっていた。



「君は本当に本が好きだね。」


「………」


僕はこの人がニガテだ。
どこがと言われれば…先ずはこの笑顔…。

一般的に言えば、リドル先輩の笑顔は好意的だろう。
だけれど、完璧すぎた笑顔に逆に僕は恐怖を感じる。

ほら、完璧な人間って怖くない?


それに、こんな僕にどうしてリドル先輩が近寄るのか不思議で仕方ない。

自分で言うのもなんだが、毎日本ばかりを読み一人で居る僕は、周りからすればネクラだと面白がられる存在。

ほら、今だってリドル先輩のファンであろう女の子達が、信じられないとでも言いたそうな目でこっちを見てる。



「隣に失礼するよ」


「……」


溜息をつきそうになりつつも、隣に腰掛けるリドル先輩を横目に見る。
…やっぱり先輩の笑顔はニガテだ。



初対面の時も、今と同様に僕は談話室で本を読んでいた。そんな僕にリドル先輩はニコニコと笑顔で声をかけてきた。

噂話に疎い僕にもリドル先輩についての噂は予てから聞いており、難癖の多いスリザリンの中でも浮いた存在…秀才でルックスも良い上に性格にも問題はなく監督生、勿論誰からも良く思われている。

そんな人物の噂なんか、嫌でも聞こえてきた。

スリザリンに居て、…いや他寮でも同様だ。
そんな完璧人間を知らない訳がない。



「ねぇ〇〇、君は図書室にある殆どの本を読んでいるのかな?」

「……多分…」


リドル先輩の瞳が薄く開き、赤い目が覗き見える。

何故か身震いしてしまい、蛇に睨まれたような錯覚に陥った。



「じゃあ……」


耳打ちしようとするリドル先輩に身体は完全に硬直した。
それでも頭の中では色んな考えが巡るわけだけれど、他人とこんな近距離になる機会がない僕にとってのこの状況は中々に新鮮だった。

しかし、そんなぼんやりとしている状況でもリドル先輩の紡いだ言葉ははっきりと聞き取れた。



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