それでも息を、していたい。
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『えーっと、はじめましてイバルくん!あなたの教育係兼直接の上司になりました、ルナ・エージェントのリドウです。』
「は、はい!よろしくお願いします‼」
『クランスピア社初めてのリーゼ・マクシア人のエージェントと言うことで…本来ならクラウンが直々に見るハズなんだけど…その、今は不在なのでルナである私が駆り出されました。不満かもしれないけど、我慢してね。』
「滅相もない‼」
ヴェルちゃんから聞いた仕事は新人の教育。
初めてのリーゼ・マクシア人のエージェントなので私が教育することになったがストライク‼
愛すべきバカの子だ、やったね!
あのおっさんの付き人やってるより百倍はたのしい仕事だ!
『じゃあ、パソコンとかインターネットの使い方はわかる?リーゼ・マクシア人は何人かわからない人が居るって聞いたことあるけど…』
「メールの打ち方しかわかりません‼」
『うん、いい返事‼いっそ清々しい!』
まあ、イバルくんはいわばテスターだ、リーゼ・マクシア人がどれほどの貢献をクランスピア社にしてくれるかの。
その点でいえばリーゼ・マクシア人特有の精霊術をいかせる戦闘方面がいいだろうか。
イバルくんの書いた履歴書を見る、慣れないエレンピオスの文字で一生懸命書いたのがわかる。
出身はリーゼ・マクシアのニ・アケリア。前職は…マクスウェル、の、巫子…
『イバルくん、ちょっといいかな?マクスウェルの巫子ってどんなお仕事?』
「よ、よくぞきいてくれました‼精霊マクスウェルに使え、マクスウェル様のお世話をする、それはそれは素晴らしい役目であり、使命で…『あっ、ごめんごめん、そのくらいでいいや。』そ、そうですか…」
しょぼーんとするイバルくんを見て心が痛むが、だからと言ってその話は聞きたくない。
精霊なんかに仕えるなんて、正直、私には頭がどうかしてるとしか思えないが、イバルくんは単純っぽいし、刷り込み的なものもあるかもしれないし。
罪を憎んで人を憎まず、精霊を憎んで人を憎まず。
『ええっと、じゃあ、一応聞いておくけど…イバルくんは、精霊とのハーフとか、そんなのはないってことでいいよね?』
「滅相もないです!」
『そう、なら良かった。』
仲良くなれそうで。
『あっ!イバルくん、マクスウェルの巫子ってこと、他の人に言っちゃだめよ?エレンピオスは精霊にまだ理解がないから。』
私を含めて、と心の中で言う。
これからの関係に亀裂が走るような発言は控えないとね。
「は、はい!わかりました、心配してくださってありがとうございますリドウ様‼」
『あー…えっと、私のことはリドウ副室ちょ…じゃなかった、リドウ室長でいいよ。』
「わかりました‼リドウしつじょっ…っ…」
突然口をおさえるイバルくん。
『…舌、噛んだの…?もうリドウ様でいいよ…』
なんだこの愛すべきアホの子は‼
「は、はい…ありがとう、ごはいます…」
『ふふ、気にしないで』
口を抑えながら答えるイバルくん。うん、私ついてる‼
そりゃあもう冤罪で大変なユリウスの運全部かっさらって来たんじゃないかってくらいに!今度ルドガーちゃんとエルちゃんとジュードくんと横に並べよう、そうしよう!
マクスウェルの巫子?
そんなのは気にならないね‼
あくまで前職だし‼
あっ、さっきので思い出した。ユリウスの冤罪、ちゃんと洗い直さなきゃ。
もう、余計な仕事増やしちゃって全く‼
それでも現実はやってくる。
私たちを置き去りにして。