それでも息を、していたい。

□side:Ludger
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「なんで兄さんじゃないとだめなんだ‼」

「ルドガー…だが、俺はもうタイムファクター化が…」

ルドガーは橋になるというユリウスを止めていた。
ジュード達はどうすればいいかわからずに皆目をそらす。

「“♪キーミーのかーわりなんーていーないなからー!そーの先にあぁた君とー使うーはーずだったじーかんはぁぁ〜♪”」

「………」

「………」

シリアスな空気になんだか場違いな歌が流れる。
靴で鬱なスルメ曲だ。

一様に音のする方をみる。
発信源はルドガーだ。
また、場違い着信か。
そう思うがルドガーの様子が変だ。
ルドガーはポケットの中を探るり、黒い箱をとりだす。

「姉さんのキューブ…‼」

「リドウの…?」

キューブが音の発信源らしく、キューブをよくみると赤く点滅し、ボタンのようなものがある。
ルドガーがそれを押すとキューブは突如浮き、光を発する。

「“ルドガー、認識。ユリウス、認識。エル、認識されず。ルル、認識。ジュード、認識。エリーゼ、認識。レイア、認識。アルヴィン、認識。ローエン、認識。ガイアス、認識。精霊マクスウェル、認識。精霊ミュゼ、認識。…統計、分析、展開、パターン4。メッセージを再生します。”」

キューブから画面が映し出され、そこにはリドウが映る。

「姉さん⁉」

「リドウ⁉」

「“あー、あー、マイクテス、マイクテス。えーっと、これ、エルちゃん居なくてユリウス居合わせてるパターンだっけ。じゃあ最初に言うことあるな。ユリウス、悪い!逃げれんかったっぽい、私死んだ!私の心臓止まったら動くようになってるんだわそのキューブ!だからユリウス橋になる必要ないから!”」

「なっ、はぁ⁉おい、どういうことだリドウ‼」

「“音声認識、ユリウス、確認、分析、パターン4-1。メッセージを再生します。……うわー、予想通りの反応。これ、説明するとお前絶対気に病むんだけど、どうせ調べるよな…えーっと、ユリウスお前私の黒匣壊したろ?治した時にビズリーに発信機つけられた。流石に自分で自分の体見るの無理あって、外せないな〜ってわけ。”」

リドウの声と同じ機械音がパターン4-1と言い、音声を再生する。
どうやら数字が小さい方がリドウの予想したパターンに対する受け答えらしい。

「そんな…嘘だろう…?なら、どうして連絡しなかったんだ…」

「“音声認識、ユリウス、確認、分析、パターン4-1-1。メッセージを再生します。……わ、また予想通りの答え選んだか、私のユリウス予想中々だな……嘘じゃない、本当。連絡しなかったのはビズリーがそれを狙ってたから。ビズリー的にタイムファクター化の兆候のない私よりは兆候のあるユリウスを橋にしたかったみたい。私がわざわざお前を売るわけないでしょ!”」

「……っく」

ユリウスが辛そうに押し黙る。

「“音声認識、無音、パターン4-1-1-8。メッセージを再生します。……あれ、はずれた、てっきりゴミチリドウとか言って来ると思ったのに…まぁ、おいといて、ここからが本題なんだけど、メッセージ全部再生したあとキューブが開くようになってるんだけど。中にタイムファクター化を止める薬が入ってる。会社の分史対策室室長の机の上に作成方法を書いた紙も。”」

「タイムファクター化を止める薬‼」

「っ⁉どうしてそんな物を…」

ルドガーは希望に満ちた声をあげる。
よかった。これでタイムファクター化するから兄さんを殺すなんてならない。ありがとう姉さん。

「“音声認識、ルドガー、確認、ユリウス、確認、分析、パターン4-1-1-8-1、メッセージを再生します。……お、今度は当たった。ユリウス、私が何もしてないと思った?ルドガーちゃん達に協力してもらって完成した、精霊術を応用した魔法薬よ。効能はタイムファクター化が完全に止まること。治るわけじゃない。副作用は服用者の時間が止まること。歳をとらなくなる。まぁ、平たくいえば時間を止めるって言う単純な仕組み。タイムファクター化を止める薬なんだから、骸殻を使わないように!”」

「…リドウ、なぜ、わざわざこんなことを」

絞り出すようなユリウスの声にキューブのリドウは答える

「“音声認識、ユリウス、確認、分析、質問パターン1。メッセージを再生します。……そんなもん私が死んだもしもの時のために決まってんでしょ⁉まさか本当に死んじゃうとは思ってなかったけどね!…って、言いたいけど。本当はわかってた。こうなること。お前だって薄々気づいてたろ?ユリウス。”」

「っ、それは…」

ユリウスが苦い顔をする。

「“…なんか質問あるならキューブに記録してある分は答えるようになってるから。”」

まるで葬式の様な沈黙。
それも仕方ない。
リドウ姉さんが、
リドウさんが、
リドウが、死んでる。

それでもルドガーは聞いておきたいことがあった。

「姉さん、聞いていいんだったら…オリジンの、審判について。」

「“音声認識、ルドガー、確認、分析、質問パターン6。メッセージを再生します。……冗談みたいな話よ。誰も、救われないような。ただ息をしているだけでも、難しい。簡単に言えば分史世界で道標を揃えてカナンの地を出現させて、ハーフ以上の骸殻能力者の魂で橋をかけてカナンの地に辿り着かなければ世界を滅ぼすってこと。”」

「……ありがとう。」

リドウの話を聞き、ルドガーはそれだけ言って、黙り込む。

それを確認したユリウスは悲しそうにリドウに言う。

「リドウ、お前は俺のことをどう思っていた?」

「“音声認識、ユリウス、確認、分析、質問パターン2。メッセージを再生します。……もしかして嫌われたとか思ってる?はは、何年の付き合いだと思ってるんだよまったく!お前が黒匣壊したせいでこうなったからって嫌いになるわけないじゃん!ユリウスしっかりしてよ?私の、最高のパートナー!”」

「…ありがとう。リドウ、ーーーーー。」

ユリウスは悲しそうに微笑み、言葉を続けるが、ルドガーには聞き取れなかった。

「“音声認識、ユリウス、確認、分析、該当パターン無し、お答えできません。”」

「…やっぱりか、まったく、言えても伝わらなきゃ意味ないだろゴミチリドウ。これぐらい予想しとけ。」

ユリウスがつぶやく、
そうか、兄さんはーー

ルドガーがそう思ったところでルドガーのGHSがなる。

ユリウスですら振り向いてルドガーを見るのでルドガーは慌てて電話に出る。

「ヴェルです!異常な分史世界か探知…いえ、発生しました!」

いつも冷静なヴェルの慌てた声でルドガーは本当に異常な事態なんだな、と理解する。

「深度が0.07。偏差が999.999、正確な数値は測定不可能、アンノウンです!深度の浅さに比べての異常な偏差の高さで、浅いため一般人が分史に紛れ込む可能性が高いと推測されます!今までこんな分史世界が探知されたことはありません!…逃走中のところ悪いですがお力をお貸しください‼」

そのヴェルの声でそういえば会社から逃げたんだった、とルドガーは思い出すが、それどころじゃない。

「…リドウだ。」

ユリウスがつぶやく。
それを聞いたルドガーはヴェルに言う。

「…とりあえずその分史世界の座標を送ってくれ。」

「わかりました…!」

そう言って電話を切る。

ユリウスはキューブから薬を取り出す。
アイスカラーのラムネの様な星型の薬。

あいつらしい、ユリウスはそう笑った。


******

奥村テイルズ繋がりで。
相棒はエルとルドガーなので、ユリウスとリドウさんはパートナー。

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