それでも
□それから…
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それから…
ルドガーが立っていたのは見慣れた、ロリコンブランコと名高い夜のトリグラフの公園だ。
仲間達ももちろんいる。
ルドガーが、みんながここにいるということは成功したらしい。
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「正史世界を含む、全ての世界を破壊してくれ。」
「…え?」
「なっ…⁉︎」
「ルドガー⁉︎」
「どういうつもりだ。」
「裏切らないと言いましたが流石に話が別です…‼︎」
後ろで口々に驚きを口にする仲間達にルドガーは振り向く。
え、ちょっとやだリュミエとエールがすでに俺にチャクラムとデュエルスピナーを向けてるんだが、何これ怖い。
「安心してくれ、やけになったわけじゃない。考えがあるんだ、頼む、信じてくれ。」
「ルドガー…」
横で不安そうな顔をするエルの頭を撫でる。
「…わかった、僕は信じるよ。僕の親友を、ルドガー。」
ジュードが胸の前で拳を握りしめて微笑む。
「私もだ、君を信じよう。仲間として、君の選択を。」
ミラが強い光を瞳にともして笑う。
「…はぁ、おたくがなに考えてっかわかんねーが、信じることはできる。ダチとしてな。」
アルヴィンがいつも通りニヤリといたずらに笑う。
「…信じてますよ、ルドガー。」
「だって友達だからねー!」
不安そうに、でもしっかりと微笑むエリーゼに強い信頼を伝えてくれるティポ。
「ほほほ、若い人の選択に老骨は口を挟むべきではありませんからね。もちろん、友としても信頼しているルドガーさんの選択に口を挟む気はありません。」
信頼を口にし、いつもと変わらず優雅に微笑むローエン。
「もっちろん、私も異議なし!だってルドガーのこと信じてるから‼︎」
元気に腰に手を当てて笑うレイア。
「…信じよう、ルドガー。王として、そして他でもない、お前の友としてな。」
しっかりと目を見て信頼を伝え、わずかに微笑むガイアス。
「私にも異存はないわ、あなたの選択肢を信じる、ルドガー。」
落ち着いた雰囲気で微笑むミュゼ。
「…裏切らないと、約束しましたからね。」
「自分達はあなたを信用します、ルドガーさん。」
武器を下ろしながら微笑むリュミエとエール。
「ルドガー、お前はもう一人で全てを選べる。だから…信じよう。お前の兄として。」
優しく笑い、全てを託すユリウス。
「ルドガー…エル、信じてるよ、ルドガーのこと。」
ルドガーを見上げ、信頼を確かにその瞳に映すエル。
それらを見て、ルドガーはうなずき、願いをもう一度口にした。
「オリジン、正史世界を含む全ての世界を破壊してくれ。」
「…いいのかい?」
「あぁ。」
ルドガーはそう答えると同時に骸殻を身にまとった。
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「…驚いた、まさかタイムファクター化を逆手に取るなんて。」
オリジンのその一声が全てを語る。
そう、タイムファクター化を逆手に取ったのだ。
全ての世界が破壊された瞬間にタイムファクター化して俺の世界を作る。俺がタイムファクター化してるからエルのタイムファクター化も解除される。進行の止まっている兄さんのタイムファクター化も解除される。
はっきり言って成功する確率は高くなかったが、それでも両方助かるすべがあるのだ。選ばずにはいられなかった。
「分史世界も正史世界もない、ルドガーの世界が“暫定正史”として正史に成り代わったんだ…‼︎」
「ふむ、しかも正史世界の人間を丸々引き込んで作ったようだな…つまりこの世界にいる人は紛れもなく正史の人間だ。」
ジュードとミラが驚きながら言う。
「ふ、ふふふ、これだから人間は面白い。君もそう思うでしょ?クロノス」
「フン、…我の用意した障害を逆に利用されては何も言えん。」
「それにね、魂の浄化のシステムまで書き換わってる。魂の浄化に僕はいらないみたいだ。」
「…なんだと⁉︎それは本当かオリジン‼︎」
オリジンとクロノスが楽しそうに会話を始める。
「すごい!すごいよルドガー!ルドガー本当に世界もエルも助けちゃった!」
エルが興奮気味に言う。
だが、まだ驚くのは早い。ここは俺の分史世界、“俺の望んだ世界”だ。
「ほんっと、あんたって突拍子も無いことするわね。」
金の髪をなびかせながら、堂々と歩いてくる。そう、その人は…
「ミラ…?エルの、ミラ…⁉︎」
「別にエルのじゃないけど、この場合はまぁ、間違ってないわね。」
「み、ミラぁーーっ‼︎」
エルが泣きながら“エルのミラ”に抱きつく。
「ちょっ、ちょっと…!もう、仕方ないわね。部屋でヴィクトルとラルも待ってるわよ。パーティの準備はできてるわ。お祝いよ、あんた達もとっとと上がりなさい。」
エルのミラは抱きついたエルをそのまま抱き上げてマンションへと戻ろうとするがふと、見回して口を開く。
「あら?ちょっと、ユリウスとリュミエとエールはどこよ、殴れないじゃない。」
殴ってチャラにしてあげようと思ったのに。とミラが言う。
「まあまあ、今は勘弁してやってくれよ、後日リュミエもエールも殴れるだろうから。……それよりミラ、」
「何よ?」
「おかえり。」
「!ふふ、ただいま。帰ってきてあげたわよ。」
夢にまで見た、誰も欠けなかかった世界を。
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リュミエは目を開く、目に入った景色、それは、
「バイカール廃坑?」
リゼマクの、ル・ロンド近くの廃坑。
何よりリュミエの…リュミエとエールの嫌いな場所だ。
“最初”を思い出すから。
初めてリュミエとエールだけで侵入した世界のタイムファクターはこのバイカール廃坑に住む魔物だった。
1度挑んでボロ負けして命からがら逃げ出して行き倒れたところを分史の医者をしているジュードに助けてもらった。
そして分史のジュードに嘘をついて協力してもらい、魔物を倒してタイムファクターを破壊した。
嫌な場所だ、とっとと出よう。リュミエは横にいるエールに目配せをし、エールも同じ事を考えていたらしく歩き出す。
が、「うぅ…」と後ろで声がした。
リュミエとエールは思わず振り向く。
「…あれ?リュミエとエール?なんか急に大きくなった…?」
少し長めの黒髪、よれ気味の白衣、20にしては童顔気味な顔立ち。
“あの”分史ジュードだ、間違いない。
だってどの世界でもジュードと会いはしても“あの”分史ジュードと同じパターンの分史ジュードは居なかったのだから。
「えっ、ちょっ…なんで2人とも泣いてるの⁉︎」
「…っ、あなたのせいです、ジュードさん」
「っ、ぅ、ほんっとずるいです、ジュードさん」
夢でもいい、双子は泣きながら“リュミエとエールのジュード”に抱きつく。
「っ、夢でもいい、おかえりなさい、ぅ、ジュードさん…っ!」
「自分、もぅしんでもいいかも…っ、ぅ、おかえりなさい、ジュードさん…!」
「えぇ⁉︎えっと…ただいま?よくわからないけど、がんばったね、2人とも。」
たくさんのものを手から取りこぼしてきた双子に、最初のひとつだけを。
******
…私何してんだ?
あたりを見回す。クランスピア社の空中庭園だ。
花壇には紫のチューリップが咲き誇っている。
私が手入れをする自慢の花壇だ。
私が座るベンチはユリウスとよくお昼ご飯を食べるベンチで…
『どういうこと…?』
私はベンチから立ち上がって辺りをもう一度見回す。
「…リドウ」
『ユリウス!』
ユリウスが来る、どうやら今ちょうど社内から空中庭園に入って来たようだ。
『私のタイムファクター、ビズリーに破壊されたわよね?どうなってんの?』
「ルドガーがやらかしてくれた。全く、かなわないな。あいつにも、お前にも。」
『え?ルドガーちゃんが?何を…って、うわっ…⁉︎』
ユリウスが行きなり私の腕を引っ張り抱きしめる。
「…もう少し可愛い声は出せないのか…」
『お前は私に何を期待してるんだ。』
「第一、ルドガーがやったことを聞くよりもっと先に言うことがあるだろう。」
『…何を?』
私はユリウスの胸を軽く押し、ユリウスの顔を見ながら聞く。
「…はぁ、ならヒントだ。おかえり、ゴミチリドウ」
ユリウスの言葉にようやく理解する。
なんだか嬉しくなる、改めてユリウスに会えたこととか、この言葉を言えることとか。
思わず涙が頬を伝うのがわかる。
『ただいま、ユリカス』
「…………」
『…?、どうしたの、ユリウ…ぴぎゃっ‼︎』
いきなりユリウスが真っ赤になったかと思えば、
思いっきりユリウスに抱きしめられ、ユリウスの胸に思いっきりぶつかる。
『なんだこれ、硬い、超硬い、痛い…マジで痛い!お前の胸は鉄か!ユリカス!』
「うるさいだまれ、というかあれだぞ、お前の泣き顔キモい、びっくりするぐらいキモいから早く泣き止んでくれ早く。早く泣き止むんだ!」
『どうしたお前⁉︎私の泣き顔がキモいことは百も承知だけど今お前の胸で鼻打ったからマジ痛くて余計に涙出てきたんだが⁉︎』
「いいからすぐに泣き止んでくれ頼むから‼︎」
がんばった人たちには、幸せな未来を。
fin.
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ひとまずこれにてそれでもは終わりです。
が、がんばった…
ルドガーの分史世界、暫定正史は文字通り“ルドガーの望んだ分史世界”です。
要するにルドガーの「みんな幸せにな〜あれ〜!」という願いの世界です。
なのでみんな生き返ります。
と、言うか、ゲームプレイ中にユリウスの分史世界みてから、ラストルドガーがタイムファクター化してエルを救うってなったときにこういう展開になるんじゃないかと思ってた。
今の今まで散々悩まされてきたタイムファクター化を逆手にとって…‼︎とか何その胸熱展開!って思ってた妄想が、この“それでも”のきっかけのひとつになりました。
でてないですが、ビズリーも普通に生き返ってます。
リドウさんに至っては生き返るついでに体まで健康体になってます。
ゲームでもしこの展開があったとしたらユリウスエンドやエルエンドと同じノリでリドウエンドとなりますww
条件は、2週目以降、ユリウス生存(つまりユリウス生存に繋がるリドウさんのサブイベを全てクリア)、ルドガーがリドウのタイムファクターを破壊しない、リュミエとエールが仲間になっている、リュミエとエール以外の仲間の好感度が最大値、最後の選択肢を同時押し…で、分岐します(笑)
無駄に条件の多い最難関ww
ちなみに3万リクのライくんのいる世界はこの暫定正史の未来の時間軸です。
まだまだ番外編とかで埋めて行かなきゃいけないところはありますが、ひとまずこれで話の筋はつながるので、完結とさせていただきます。
ご愛読ありがとうございました!