二人三脚競走曲
□第二レース・後半戦
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アスカードの壁画で写真を撮った後、アスカードを後にする。
エミルちゃんとラスクちゃんはひとまずパルマコスタに行くようだ。
そのためにハコネシア峠を越えるために道中に現れる魔物を倒したり仲間にしたりしながら進んでいる。
『ふうっ、掃討完了ですね。』
あたりを見渡しながらスカートの土ぼこりを払う。
「…おい、サクル。俺より前に出んじゃねぇよ。敵に攻撃する時に邪魔だ。お前ごと斬られたくなかったら少し後ろに下がりやがれ。」
「もぅ!エミル!サクルにそんな言い方ないでしょ!サクルがいてくれるだけですっごく戦闘が楽なのに!」
ラスクちゃんがつっけんどんに言い、マルタちゃんがかばってくれる。
しかし私にはわかるのだ。
まだ、ほんの少ししか関わっていないがこのラスクちゃん、ーーーなんだかんだ言ってすごく優しい。
エミルちゃんと同じである。
何回かこれまでの道中、それとなーくからかったりしてみたが怒鳴ったりはしても、暴力は振るわないし、結構照れ屋だ。何よりからかいがいがーーーって、それは置いといて。
『大丈夫ですよ、マルタちゃん。それにしてもラスクちゃんは優しいですね〜、ありがとうございます♪』
「…ニヤニヤしてんじゃねーよ。」
「?、どういうこと?サクル?」
頭にはてなマークを浮かべるマルタちゃんに説明しようと口を開けばラスクちゃんはふぃっとそっぽを向く。
それに思わずふっと吹き出すとこっちをギッと睨みつけてきた。
ーー本当に、おもしろい。
『ふふふ、さっきマルタちゃんが私がいるだけで戦闘が楽って言ってくれたでしょう?それはつまり、その楽になった分は私が肩代わりしていることになります。』
「あ…!そ、そっか…」
『だからラスクちゃんは無理するなって意味で下がれって言ったんですよ。だって考えてみてください、ラスクちゃんほどの剣の腕で、いくら乱戦になったとしてもうっかり私に攻撃を当てちゃうなんてありえないでしょう?』
「た、たしかに…!エミルすっごい強いもんね。」
『それなのにわざわざ“敵と一緒に斬る”なんて言ったのは私が“ラスクちゃんに斬られる”可能性を感じて、自主的に下がるのを期待して、もしくは純粋に邪魔だということをアピールすれば私が身を引くと思ったんです。』
私だって役に立ちたいから戦闘に参加して前衛で戦ってるんですし、それが役に立つどころか迷惑になってたら身を引くでしょう?と続ける。
「な、なるほど…‼︎」
『こんな感じでいいですよね?ラスクちゃん?』
「いやはや、バレバレですねぇ。」
「騎士エミルもわかりやすいけど人間サクルのがすっごいよねー!」
「うるっせぇ!黙れてめぇら‼︎」
チャチャを入れてきたテネブラエやウェントスに対しても怒鳴る。
『これは照れ隠しですよマルタちゃん』
「おい、サクル‼︎」
「すごい!優しいねエミル‼︎私全然気づけなかった‼︎さすが私の王子様‼︎」
「おいっ!飛びつくな!抱きつくんじゃねぇよ‼︎離れろマルタ‼︎」
目をハートにしたマルタちゃんがラスクちゃんに飛びつく。
うん、楽しい。思わず顔がニヤつく。
「笑ってんじゃねぇよサクル‼︎くっそ、覚えてやがれ‼︎」
そう言ってラスクちゃんは目を閉じる。
「…、ん?あれ? わっ⁉︎ま、ままま、マルタ⁉︎なんで抱きついてるの⁉︎」
「あーん、エミルゥ〜」
『ふふふ、おもしろいですねぇ〜』
「ちょっ、姉さんも笑ってないで助けてよ‼︎」
「あ!サクル‼︎ありがとうね!サクルが楽できるように私も戦闘がんばるから‼︎」
『ふふ、ありがとうございます。』
***
ニヤニヤ:サクル姉さんはマルタとエミル、ラスクの絡みが見れるだけで顔がニヤけるぐらい幸せ。
ラスクちゃんは優しい:ラタトスクは身内には超甘い。
騎士エミル、人間サクル:ウェントスは人名の前に種族や役職、肩書きをつけて呼ぶことが多い。
ちなみにマルタのことは巫女マルタと呼んでいる。