幻蝶の錬金術師
□Y
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ドンドンッ!!!
「ねぇ、何回ノックしても出てこないよー」
「留守ですかね?」
「明かりがついてるからいると思うけど…」
私は思い切ってバンっとドアを開けた。
「え、ちょお前なぁ…」
エドははぁっと言いながら私の跡をついてきた。
「うわぁ!なーにこれ!本しかないよ!!!!」
入口から本だらけだった。
ここに人住んでんの!?!?
「シェスカさーん!いらっしゃいませんかー?」
「おーい!」
私達は大声で呼んでいたら、中から声がした。
「〜〜て!」
「ねぇ、本の中から人の声がするっ!」
私は顔をサーッとして言った。
そして皆で本をどかせた。
「はぁ〜…有難うございます」
やっと掘出したシェスカさん。
「私本が大好きなもので分館に就職が決まった時はすごく嬉しかったんですが…。でも本が好きすぎてその…、仕事中だという事を忘れて本ばかり読んでいたものでクビになってしまいまして」
「あんた…、」
「病気の母をもっといい病院に入れてあげたいから働かなくちゃならないんですけど…」
「………。」
「ああ〜本当に私ってば本を読む以外は何をやっても鈍くさくてどこに行っても仕事もらえなくて…。そうよダメ人間だわ、社会のクズなのよう…」
うわ、すっごいめんどくさい人。
それによく喋る…
「あー…ちょっと聞きたいんだけどさ。ティム・マルコー名義の研究書に心当たりあるかな」
「ティム・マルコー…」
シェスカさんは、うーんっと顎に手をやり考えていた。
「ああ!はい覚えてます。活版印刷ばかりの書物の中でめずらしく手書きで、しかもジャンル外の書架に乱暴に突っ込んであったのでよく覚えてます」
「分館にあったんだね…」
「って事は、やっぱ丸焼け?」
私達は、乾いた声で笑いながら玄関に向かった。
「あ…あの、その研究書を読みたかったんですか?」
「ああ。でも今となっては知る術も無しだ」
「私中身全部覚えてますけど」
「は?なーに?もっかい」
「いえだから一度読んだ本の内容は全部覚えてます。一字一句まちがえず」
私達は目を丸くして彼女を見た。
「時間かかりますけど複写しましょうか?」
「ありがとう本の虫!!」
「エド!それ、失礼!!!」
一筋の光が見えた。