短編

□よし、決めた。
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「―――…テツヤ」




小さな背に掛けられた声。
黒子テツヤは振り返る。

長く、幅広い廊下の先に同僚の赤司征十郎の姿が。
珍しい、彼がここにいるなんて。


「聞いたかい?」

挨拶もなく、さらに主語もなく聞かれた言葉に首を傾げる。
はて、なんの話だろうか。

いつもはポーカーフェイスを保っている赤司の目が、悪戯っ子のように細められ、口元は小さく笑みの形を作っていた。
あぁ、と、ついさっき、同僚から聞いた話を思い出す。


「サタンの落胤が、祓魔師になるために塾に通っていたらしいですね」

「そう。僕らの天敵がいたんだってさ」


いいね、楽しくなってきたよ。
 
特になんの感想も持たない黒子には共感できないことだ。


それを解っているのだろう。
赤司も特に同意を求めたりはしない。


「相変わらず、あの男はおもしろいことをしてくれる」

「メフィストさんですか。…あぁ、彼も悪魔でしたね」


あまりにも人間らしく振る舞うから忘れてました。
無感情に、どこまでも興味を欠片も示さず言い切る。



「今はメフィストの監視の元、日本支部にいるが…」



行ってみないかい?

また、この人は。
心の中で呟き、ため息をつく。

我が道をルールで行くようなこの人は、黒子の答えを用意していないのだ。
選択肢はyesかはい。



 
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