短編

□つまらない、世界
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※グロ表現あり注意。


























―――…自分は“異質”な存在だということを少年は理解していた。
右を見ても左を見ても、自分とは“ずれて”いたから。

だから少年は知っていた。

どうすれば、人が“しぬ”のかを。

頸動脈を切って、血の雨が降って。
目を抉って、闇を映し出して。
刃(ヤイバ)を深くまで突き刺して。





―――…くだらない、世界だ。
周りに散らばった“残骸”を踏み潰し、少年は歩き続ける。




「―――…わぁ…これは、スゴいですね…」




そんな少年に、声がかけられた。
コツリと、現れた青年は少年が汚した道を歩き、近付く。
訝しげに首を傾げるのは少年。
今まで少年が見てきた人間は2パターン。

異質な力を持った自分を恐れるか 

異質な力を持った自分を利用しようとするか 


前者も後者も、少年は排除してきた。


自分の世界には要らないからだ。
だけど、なぜだろうか。
目の前にたたずんでいる青年は、そのどちらにも属していない気がしたのだ。


「こんにちは」


ぽん、と、血に濡れた髪に戸惑いもなく触られたことに少年が動揺した。


「―――…だ、れ…?」



久方ぶりに出した声はほんの少し、掠れてしまっていた。
それに青年は笑みを溢し、少年の目線に合わせしゃがみこむ。



「僕は黒子テツヤと言います」

 
君は?と自然な流れで聞かれた言葉に、少年がたどたどしく答えた。



「…びゃく、らん…」


この青年は自分の名前を聞いてどう思うのだろうか。
ふと、そんな疑問が少年頭に浮かんだ。

僕を利用しようとするだろうか。

それとも僕を殺すのだろうか。


少年の子供らしかぬ部分が動き出す。



「白蘭。良い名前ですね」

でも、青年はそんな雰囲気は全くない。
驚き、瞠目する少年に青年がふっと笑う。


「世界が、つまらないですか?」

「…え…?」



きょとんとした少年に青年は続ける。



「自分と“ずれて”いる世界はつまらないですか?」


つまらない。そうだ。つまらないんだ。

 
すとんと、少年の胸のうちに落ち着いた言葉にこくりと頷く。


「そうですか…」


少し、寂しそうに微笑んだ青年は、少年に手を差し出す。
その手を、じっと見つめる。


「僕と一緒に来ませんか?」

「…あなたと…?」

「はい」



この手をとっても良いのだろうか。
そんな疑問を浮かべたが、一瞬で消えた。

体が勝手に動き、青年の手を掴んでいたからだ。
ふっと目を優しく細めた青年はパチンと、指を鳴らす。






―――…闇が、二人を包み込んだ。








END
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