企画部屋
□“笑顔”で答えて
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「今大会、地区予選はレギュラーは一切出ないことが決まった」
キャプテン、赤司の言葉に部員たちの間に動揺が走る。
それもそのはず。
帝光中が誇る、無敗の“キセキの世代”。
それがだれも出ないと言っているのだから。
「もちろん、ベンチにも入らない」
戸惑い、困惑する彼らを見ても赤司は表情一つ変えない。
舞台の上で傍観態勢をとる“キセキの世代”を見てわかるように、だれも反対ではないようだ。
「な、なんでですか?」
広い体育館で、舞台に寄りかかる赤司から見て、一軍、二軍、三軍の順に並んでいる。
質問をしてきたのは一軍の一人だ。
「一人一人のスキルアップだ」
「え?」
「今まで大会はレギュラーだけで出てきたがそれだけでは問題点が発生してしまった」
問題点?なんだそれは。
戸惑ったような雰囲気に、赤司は小さく嘆息する。
「バスケがいくら上手くても、実戦で使わなければ意味がない。試合慣れを今回の地区予選を通じて練習してほしい」
“練習”
中学の部活最後の大会を練習と表現した赤司。
それに息を呑む。
“絶対王者”だからこそ言える言葉だ。
「もちろん、」
赤司の目が少し、細まる。
一瞬で纏う空気を変えた。
「敗北は許されない。“勝利”の二文字だけを期待しているよ」
ぶるりと身を震わせる。
身体の奥底から沸き上がる恐怖。
多大なプレッシャーが部員たちにのし掛かる。
「―――…あんまり苛めないであげてください、赤司くん」
恐怖で凍り付いた部員たちを解かしたのは、帝光中“キセキの世代”幻の6人目と呼ばれている者の声だった。
「苛めてはいないよ、テツヤ」
部員たちから視線が外され、緊張に固まった身体が解放される。
舞台上に座っていた黒子が赤司の隣に降り立つ。
部員たちに視線をやった黒子は、ふわりと、笑った。
そのあまりに綺麗な笑みに、儚い笑みに、息を呑む。
「君たちなら、大丈夫ですよ」
根拠のない言葉だ。
だがしかし、なぜだろう。
―――…必ず、勝たなければと思うのは。