企画部屋
□“笑顔”で答えて
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「―――…気に入らないね」
部員たちが去った体育館。
残ったのは“キセキの世代”の面々だけ。
そこで、唐突に赤司が言った。
「何がですか」
再び舞台上に上がり、足をぶらつかせる黒子が問いかける。
「黒子っちの珍しい笑みを見せちゃったことっスよ!」
後ろから抱き付いてきた黄瀬が耳元で言う。
大きめの声に、一瞬顔をしかめるも次の瞬間には元に戻っていた。
「やる気を出させるためとは言え、ちょーっと勿体なかったんじゃない?」
グシャリと、お菓子の袋を握り潰した紫原が言う。
「そうですか?僕の笑顔1つでやる気になってくれるんでしたらいつでも」
淡々と言う。
それに眉をしかめた黄瀬が反論する。
「ダメっスよ!黒子っちはオレらのなんだから!」
黄瀬の主張に周りが頷いて。
だけど一人だけ、不機嫌そうに言う。
「誰が“オレら”のだ。テツはオレんだよ」
ベリッと黄瀬を引っ剥がす青峰。
そのまま腕に抱き込み、威嚇する。
微かにムッとしたような雰囲気が漂うが、青峰はそれに余裕の笑みで持って答える。
まったく、と緑間が小さく嘆息する。
「…で、本当の理由とはなんなんだ」
話題を切り替えるように言われた話に赤司は一瞬、考えるように手を額に当てたが、すぐに思い当たったのか答える。
先程の話だろう。
“キセキの世代”がなぜ地区予選に出ないのか。
理由は先程話した通りのことだって含まれているだろう。
しかし、この赤司と言う男がそう簡単にそんな理由で“キセキの世代”を出さないと言うことはあり得ないだろう。
単に、先程の話で口を出さなかったのは赤司の言っていたことだからという理由が挙げられるが。
「―――…僕が言ったんです」
「…黒子が?」
珍しいこともあるもんだと思った。
だが、赤司の意見を変えられるのは黒子しかいないのだから同時に納得もした。
「なぜだ?」
「別に地区予選から出ても良かったんじゃないスか?」
本選まで暇になっちゃうスよ。
不思議そうに首を傾げた二人を見て、黒子が答える。
「だって、つまらないでしょう?」
その、言葉だけで十分だった。
「そっか〜。黒ちんが言うなら納得。赤ちんも賛成してんでしょ?」
「あぁ。それにあいつらの腕試しになるのも事実だ」
「でも負けちゃったらどうするんスか?」
黄瀬が不安そうに入り口を見やる。
信用していないわけではないが、やはり不安は残る。
「馬鹿か、貴様は」
「だからこそのテツの“笑顔”だろうが」
―――…その言葉に、笑ったのは誰だっただろうか。
END
→あとがき