企画部屋

□尊敬しています
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「…あ?尊敬してるやつ?いるに決まってんだろ」



暴君、青峰のそんな発言に驚かない者はいなかった。


「はぁ!?お前が!?」


驚いたような若松の言葉に、桜井が同意するように頷いた。

桐皇バスケ部の休憩中、話の話題は“尊敬している人物”に。
それぞれが憧れの人物の名前をあげるなか、青峰だけは黙っただけだった。

気になった若松が聞いてみたところ、そんな答えが返ってきたのだ。
驚かないはずがない。

この青峰の、人を馬鹿にする態度を見たことはあるが、尊敬している場面は見たことがない。



「う、嘘だろ!?」

「嘘なんか付くかっつーの」


鬱陶しそうに顔をしかめた青峰。

 
「誰なん?」

驚きからはやくも回復した今吉が聞く。
眼鏡に隠れた瞳がキラキラしていて好奇心を隠そうともしない。



「―――…テツ…黒子テツヤ、っス」



“黒子テツヤ”

その名前に息を呑む。



彼は強いわけではなかった。
ドリブルもシュートも並み、体力も平均よりちょい高め。

そんなスポーツ選手としてどうなんだというような要素しか黒子テツヤにはない。


だがしかし、彼には誰にも真似できない“特技”があった。
驚異的に高められたそれ、はことごとく強い選手たちを撃破していった。



なんてことない、視線の誘導だけで。



 
「テツのプレーは頭じゃ理解してんだけどよ、身体が追い付かねぇ。むしろこっちの動きを先読みしてんじゃねぇかって思うな…」



中学時代、異質のプレイヤーとして誰もが憧れた。
皆が感心するなか、突然体育館の扉が開いた。




「―――…青峰くん!!」


バァンッと派手な音をたてて開いた扉からはマネージャーの桃井が。

その表情はキラキラと輝いている。



「ねぇ!明日の練習試合の対戦校、聞いた!?」

「いや、聞いてねぇけど」

「誠凛だって!テツくんに会えるよ」





パァァッと、桃井の周りに花が咲いたような幻影が。



“誠凛高校”去年出来たばかりのその新設校のバスケ部は昨年、初めての大会で全国にまで駒を進めた強豪校だ。

 
さらに今年、先程まで話題に登っていた“黒子テツヤ”が進学した高校だ。





「ホントか!?」

「嘘言わないわよ!」



べーっと可愛らしく舌を出した桃井。
だが青峰は見ていなかった。



「戦えんのか、テツと」




ニヤリと、青峰が凶悪な笑みを浮かべた。

桜井の情けない悲鳴が体育館に響き渡ったのだった…。







END
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