企画部屋

□あなたに忠誠を
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「―――…あまり好かれてねぇみてぇだなぁ…」


ポツリと、小さく呟いた言葉に海兵が首を傾げた。



「…大将…?」


聞かれてはいないみたいだ。
手に持った麦わら帽子をくるくる回し、イスにもたれ掛かる。

その人物、大将“麦わら”は辺りに視線をやる。



途端にさっと剃らされる視線。
ため息をつき、帽子を深く被る。



じっとしているのが性に合わないらしい自分は本部から離れ、自由気ままに航海中だ。
本来ならば厳罰ものだが、行く先々で功績を挙げられては文句も言えない。



「…ルフィさん…?」



目の前に座る少年が問いかける。
航海中に出会った海賊船にいた少年だ。

 
海軍になることを聞いてなんとなく船に乗せて連れ回している。
そろそろ本格的に海軍に預けるためにこの島に、寄ったのだが―――…



「…いや、気にすんな。たぶんオレの気のせいだな」


この街に、この店に入った瞬間から視線が付きまとっていた。
最初は自分が大将だから見られているのだと思った。
大将は滅多に本部から出るもんじゃないし。

だがすぐに違うと気付いた。

怯えたような表情に、嫌悪を乗せた視線。

決して自分と目を合わそうとしない住民たち。



―――…まぁ、その内わかるか…。


 
考えることを放棄したルフィは小さく欠伸をする。


「ルフィさんとはここでお別れなんですね」



しゅんとした少年コビーが言う。



「いつでも会えるだろ。…コビーが本部に来れば、な」


ニヤリと、ルフィが笑う。
コビーはごくりと唾を呑み込む。

今、目の前にいるのは海軍の主力の一つ、大将“麦わら”…モンキー・D・ルフィその人。


言葉を発するより早く、コビーは大きく頷いていた。
それ満足げに笑うルフィ。



「そういや、コビー」

「はい?」

「さっき言ってた“ゾロ”ってやつは…」



ガタンッ!!



「?」




突然ルフィたち以外の客が机をひっくり返しながら驚きを露にする。

 
ルフィの傍に控えていた海兵が辺りを警戒する。
ビクビクする住民たちに目を瞬かせるしかない。



「こ、ここでゾロの名は禁句のようですね…」


ひそひそと小声でルフィに言う。
ルフィが手を上げて、海兵を制する。




「ふーん…」

「ここの海軍基地は“モーガン大佐”と言う―――…」





ガタガタァンッ!!



「えぇ!?」

「おお!!」



コビーが驚きに目を見張り、ルフィが楽しげに目を細めた。



 
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