短編

□理解できないだけ
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「―――…ご機嫌ですね。なにか良いことがあったんですか」

「テツヤ?…まぁね。良いことって言うより、楽しい、かな」

「そうですか」




洛山高校トレーニング室、トレーニングマシーンの一個に腰かけた赤司。

流れ落ちる汗をタオルで拭きながら隣に座り込んで本を読む黒子を一瞥する。
部活の時間であり、自主トレに励むバスケ部部員がいる。


そんな中、赤司と黒子は話をしていた。




「興味があるかい?」

「君のことだからどうせくだらないことなんでしょう」

「断定は酷いな。テツヤもきっと興味を持つ」







―――…赤司という人物は扱いにくい人間だった。


同じバスケ部部員は赤司のクセが強い性格に敬遠しがちだ。

 
その上“キセキの世代”という肩書きも持っている。



そんな赤司が、唯一黒子だけを気にかけている。

影が薄く、気を抜けばすぐに見失ってしまうために赤司とは違った意味で扱いにくはある。



そして驚くことになる。

“キセキの世代幻の6人目”の肩書きに。




「そうですか」

「冷たいね。少しは関心を持ったらどうだい?」

 
本を読みたいのにいつも以上に語りかけてくる赤司に視線をやる。


静かにしてくれませんか、という意味合いを込めて見てみても赤司は軽やかに流す。




「負けた、そうだ」

「―――…は?」

「“キセキの世代”が負けたんだよ?…おもしろいだろう?」




思わず赤司を仰ぎ見た黒子を楽しげに見下ろす。



いつものポーカーフェイスが崩れた瞬間を見るのは中々楽しい。
さらに機嫌が良くなった赤司。

そして上機嫌に語り出す。





「その“キセキの世代”を破ったのが、“誠凛”だよ、テツヤ」

「…」





さらに黒子の目が驚愕で彩られる。
皮肉にも、黒子が進学を考えていた“誠凛”。


 
「…そう、なんですか…」

「テツヤが進学していたらもっと強くなっていた。…行きたかったかい、テツヤ」

「…」





僅かに視線がさ迷うのを見た赤司は口の端を上げて笑った。




驚異になったかもしれない、そして未だ発展途上にある黒子が傍にいる。
それだけで赤司の機嫌は良いのに、さらに赤司が楽しくなるような情報が入った。




「…負けたのは、誰ですか?」

「涼太だよ」

「黄瀬くん、ですか」



黒子の脳裏に写し出されたのはかつてのチームメイトの黄瀬涼太。



 
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